新型コロナウイルスをめぐって、中国当局は…


 新型コロナウイルスをめぐって、中国当局は、1月7日までに感染者が相当いたことを初めて明らかにした。習近平国家主席はすでにこの時、感染防止対策の指示を出していたそうだ。今回の発表は、その後の感染拡大を抑えられなかった習氏への批判をかわす狙いがありそうだ。

 しかし、本当に1月初旬の段階で感染状況を掴(つか)んでいたのか。ならばなぜその時、情報を世界に発信しなかったのか。中国当局への不信は募る。今もって感染源、感染経路、その広がり具合は解明されず、発生初期の状況は闇の中だ。

 それらの確かな情報がないため、日本ではこれまで感染封じ込めや感染経路特定の手順について試行錯誤の面があったことは否めない。

 今のところ、医学者らの所見では致死率は低いが、軽症の人たちの感染が知らない間に広がる可能性もあるという。国民一人一人の基本的な衛生対策が必要だ。

 国立感染症研究所エイズ研究センターの武部豊室長(当時)は今世紀初頭、中国における新たなエイズウイルスHIV-1の発生から拡大までの追跡調査を行い、いわゆる「エイズ地図」を作成。その綿密な調査で世界の専門家を驚かせた。

 当時、武部さんを取材したが「アジアにおけるエイズの猖獗(しょうけつ)ぶりとその感染ルートを示し、日本での拡大を防ぐのに役立てたかった」と話していた。日本はウイルス研究者の層は厚いと言われ、医療体制も高く評価されている。医療の総合力を信じたい。