「深夜ミサより戻り来て聖菓切る」(山内…
「深夜ミサより戻り来て聖菓切る」(山内しげ子)。クリスマスが近づき、ケーキの注文の広告を見掛けるようになった。それにちなむ店の飾り付けや音楽も増えている。クリスマスというと、プレゼントや家族と一緒に食べたケーキが思い出される。
かつては、本当にサンタクロースがいると信じていたが、成長するに従い、それを疑うようになった。いつからそうなったかという記憶はないが、自然に分かってしまったということだろう。
だが、そうであっても、この日にケーキを家族で食べるという習慣は続いた。街中で宣伝していれば、どうしても財布のひもが緩み、ついつい買ってしまう。ささやかなお祝いに心を弾ませたことが懐かしい。
その意味で、クリスマスケーキは家族の絆を深めるものとのイメージがあった。しかし最近では、核家族化や個人主義を反映してか、ホールケーキも家族用だけではなく、おひとり様用のものも売られ、しかも人気があるという。
1人で祝い、1人でケーキを食べるというのは、少子高齢化時代の一つの側面なのかもしれない。独居老人の孤独死なども、こうした現象と重なるものがある。
家族という背景が薄くなったクリスマスというのも、寂しい限り。もともとクリスマスはキリスト教のお祝いで、神に感謝する宗教行事が日本に伝わり、イベントとして広まったものである。皆で楽しむとともに家族の絆を深める日として祝いたい。