人工知能(AI)による囲碁ソフト「アルファ…


 人工知能(AI)による囲碁ソフト「アルファ碁」と2016年に対局し、敗れた韓国の李(イ)世●<石の下に乙>(セドル)九段(36)が先月引退した。聯合ニュースのインタビューに「AIの登場で、死に物狂いで第一人者になっても最高ではないことが分かった。どのみち勝てない存在がある」と語ったという。

 李氏は、当時の対局に1勝4敗で負け越したが、プロの打ち手同士でもあり得る勝敗であって、必ずしも実力差が表れているとは言えない。しかし、その後アルファ碁の進化のスピードが上がっており、李氏は決断した。

 囲碁や将棋は頭脳戦であり、アルファ碁という機械に人間が敗れたという事実には、やはり驚きが先立つ。AIが最初に人間と対戦したのはチェスで、将棋、囲碁と続き、いずれも人間の側の分が悪い。

 一方、将棋のトップ棋士、羽生善治氏はAIとの対戦はないが、AIの力を最強クラスの棋士あるいはそれ以上だと認めている。それでも「最後に頼れるのは人間の決断である」という内容を口にしている。

 また「(将棋や碁の)伝統的なものは、スポーツという明確な割り切り方ができないものを積み重ねてできているものでしょう。お花でもお能でも全部同じです」(柳瀬尚紀氏との共著『勝ち続ける力』)とも。

 スポーツのように勝敗で割り切れない華道や茶道と同じく将棋道だというわけだ。羽生氏にとってAIは道を究めるための道具。一般的にAIの社会的位置付けはそうあってほしい。