「技術(機械)は自然の中の異物として捉え…


 「技術(機械)は自然の中の異物として捉えられることが多い」「工場が都市から離れて、次第に遠い地域に建てられるなど、日常的に技術の恩恵を受ける量が多くなればなるほど、技術の本質が人間から見えなくなっていく」(吉川弘之著「帰ってきた機械」)。

 さしずめ原子力発電所などは「異物」の典型と見られている。以前そこで働く職員の子供たちが、通う小学校でいじめられたという事例もあった。

 そんなこともあり、かつて原子力政策円卓会議では「安全確保には、いかに従業員一人ひとりが誇りを持って職場を守ることができるかを追求することが重要だ」と、職員の心身の健康への方策が議論された。だが東京電力福島第1原発事故後は、安全管理についてハード面のことばかり。

 再稼働向け審査に合格した宮城県の東北電力女川原発2号機。震災後半年ほどして取材で訪ね、職員らにその間の生活や職場の様子についてコメントをもらおうとしたが、表情は一様に硬く、なかなか応じてくれなかった。

 震災直後、地元マスコミの取材攻勢や原発批判の嵐にうんざりし、職員らの間に箝口(かんこう)令に似たものが出ていたと聞いた。女川原発では事故が生じなかったのに、このありさまだった。

 今回、地元自治体の首長は「住民らに広く意見を聞きたい」と話している。安全確保には、原発施設職員らと地元との対話なども企画し、彼らに誇りを持って仕事をしてもらう環境をつくり出すことだ。