カトリック教国でなくなる時


地球だより

 アルプスの小国オーストリアはフランス、スペイン、ポルトガル、イタリアなどと共に欧州の代表的カトリック教国だ。そのオーストリアのカトリック教会の信者総数は昨年12月31日現在、約505万人で前年の511万人より約1・1%減少した。教会脱会者数は昨年5万8378人で前年比で8・7%増加した。オーストリア教会司教会議が9日、公表した教会統計だ。

 この教会統計のトレンドが今後も続けば、カトリック信者数が同国全人口(17年統計約880万人)の過半数を割るのはもはや時間の問題だ。筆者が1980年にオーストリアに初めて足を踏み入れた時、カトリック信者数は全人口の80%を超えていた。同国教会で最大のスキャンダルと言われるグロア枢機卿(すうききょう)の教え子への性的虐待事件後、教会に背を向ける信者が増え続けてきた。グロア枢機卿は当時、同国教会最高指導者だった。

 そして昨年7月、新たな聖職者の不祥事が報じられた。グルク・クラーゲンフルト教区担当のアロイス・シュヴァルツ司教はその贅沢(ぜいたく)な生活と女性問題が発覚し、バチカンから教区の司教職を解任されたばかりだ。

 オーストリアは歴史的に北上するイスラム教を阻止する欧州のキリスト教社会の砦だった。仏人気作家ミシェル・ウエルベック氏の話題作「服従」の話ではないが、オーストリアがフランスに先駆けてイスラム教国になるのも決して非現実的ではなくなってきた。

(O)