盛衰多き韓国国産車
地球だより
その国の経済レベルを推し量るには走っている国産車を見れば分かるとある韓国人から聞いたことがある。1台の車には技術の粋が結集されているからだろう。その意味で韓国の場合、記者が初めて訪れた二十数年前から比べ現在は隔世の感だ。何せ90年代前半当時、韓国二大自動車メーカーの一角だった「大宇(デウ)」の大型セダンを運転し、スピードを出すと飛んで行ってしまいそうなボディーのちゃちさに驚いたものだ。今は日本車に引けを取らない品質とデザインを誇る。
90年代末、大宇自動車はアジア通貨危機のあおりで財閥大宇が解体したことで破綻に追い込まれたが、古くから提携関係にあった米大手GMとの関係を強化し、ブランド名も「DAEWOO(=大宇)」をやめて「シボレー」に変更。あのシンボルマークの金色十字のエンブレムを付けた車がここかしこを走っている。韓国人には馴染み深い「大宇」の自動車が一度は消滅の危機に瀕(ひん)しながら、ようやく復活に向け軌道に乗ったかに見えた。
ところが今度はメインバンクの資産処分拒否特約が期限切れになり、親会社のGM側が不採算工場の閉鎖を言い出した。国内販売店を大幅縮小して大きなニュースになっている。労組はこんな最中にありながら賃上げ要求のデモを続け、労使交渉が難航し、一時は法廷管理(会社更生法に相当)の手続きに入るかと思われた。韓国国産車には技術の粋だけでなく、ドラスチックな盛衰史が詰まっている。
(U)