聞きたくない現実
地球だより
フランス人が最も聞きたくないのは「フランスは二流国だ」という言葉だ。どんな国にもプライドはあるが、フランス人は米英のアングロサクソンに対抗する先進国として、核武装し、国連安保理の常任理事国で、国際的発言権を確保することに余念がなかった。
5月の大統領選で、ロシアのサイバー攻撃が指摘された。欧州連合(EU)擁護派で金融界出身のマクロン氏はロシアにとって好ましくない。ロシアのテレビ放送局は「フランスはドイツへの隷属の道を選んだ」「国際舞台から消え、二流国になった」などと報じた。
第2次世界大戦で国土の半分をナチス・ドイツに占領されたフランスとしては、ドイツへの隷属は受け入れられない。イラク戦争に最後まで反対し国際的影響力を行使したフランスだが、シリア問題ではアメリカ主導の有志連合に加わり空爆している。
大量に押し寄せる難民問題では、国内のアラブ系移民が差別に苦しんでいることから、フランスを目指す難民は少ない。イスラム女性のスカーフやブルカ着用が禁止され、無理な同化が強いられ、イスラム難民にとっては宗教弾圧と映る。
英国がEU離脱を決め、今後はドイツとフランスが牽引役と思いきや、長期不況、長期高失業率のフランスを見て、両国を同等と見なさない空気もある。最近、2年間失業していたフランス人の友人が職を得た。彼は「今度失業したら国を出る」と言っている。
(M)