セウォル号事故から2年


地球だより

 大型船「セウォル号」が韓国南西部沖で沈没し修学旅行の高校生を含む約300人が犠牲になった事故から2年がたち、各地で追悼行事が行われた。そのうちソウル光化門広場での「追悼文化祭」をのぞいたが、「文化祭」とは趣を異にした政治集会のようだった。

 激しい雨が降りしきる中、参加者はざっと数千人。舞台裾に「行動しろ」のスローガン、大通りの端には過激デモで有名な労働組合の車が何台も止めてあり、会場には左派政党をはじめ反政府色の強い団体の大きな旗が所狭しとはためいていた。壇上でマイクを握った男性が「最後まで真相を究明しよう」と叫ぶと聴衆は歓声を上げた。

 遺族の深い悲しみを慰め、社会全体が事故から教訓を得て二度と惨事を繰り返さないと誓うのなら分かる。だが、なぜか「政府は真相を隠している」「本気で救おうとしなかった朴槿恵政権に責任がある」という主張が“正論”のように幅を利かしていた。

 ちなみに事故原因は船の過積載や違法改造、これらを許した官民癒着、安全不感症など複合的なものだった。救助の第一責任者である船長はじめ船員たちは既に司法処罰され、船長は殺人罪で無期懲役を言い渡された。「真相」「責任」は終わった話ではないのか。

 沈没2年の異様な光景を、とある韓国紙社説は「成熟した社会と言えるか」と書いた。良識に出会ったようで少しホッとさせられた。

(U)