潘基文氏「中立性原則」違反の常習者


 国連の潘基文事務総長は、9月3日北京で開催される「抗日戦争勝利70周年式典」に参加する。「事務局長は参加するだろう」と考えていた当方は、「やっぱり」といった思いが湧いてきた。

 「抗日戦争勝利70周年式典」は中国共産党政権の歴史観に立脚して祝賀されるイベントだ。193カ国の加盟国を抱える国連の事務局トップが参加すべきではないことは通常の外交官ならば分かる。韓国外相などを歴任した職業外交官出身の潘基文氏が知らないはずはない。国連は世界の平和と紛争解決を明記した国連憲章を掲げているが、その原則は「中立性」だ。

 米国や日本は国連事務総長の「抗日戦争勝利70周年式典」参加に懸念を表明している。日本政府は事務総長にその件を通達したと聞く。当然だろう。中国共産党政権が歴史的記念日を国威高揚の場に利用し、特定の国(この場合、日本)を糾弾する狙いがある。潘基文氏は中国側の意図を知ったうえで、参加を決めたのだ。同氏は確信犯だ。
 
 当方は過去、このコラム欄で数回、潘基文氏の言動が国連の「中立性の原則」を違反していると報告してきた。特に、日本の過去問題に対しては一方的な歴史観に基づいて日本を批判してきた経緯がある。

 潘基文氏の反日発言は国連事務総長に選出される前から見られた。同氏が2005年、韓国の外交通商相時代、ブリュッセルの欧州議会を訪問し、その直後の記者会見で「欧州議会も小泉純一郎首相(当時)の靖国神社参拝を批判した。第2次世界大戦参戦国として日本軍の犠牲となった経験をもつ欧州の国民の視点から見ると、靖国神社参拝は受け入れられないという意見が多かった」と報告した。その直後、「日本首相の靖国神社参拝は議題ではなく、1人の記者が質問したので、欧州議員の誰かが答えただけに過ぎない。欧州議会が小泉首相の靖国神社訪問を正式に批判したという発言は事実とは異なっている」ということが関係者の証言で明らかになった。韓国外相の発言は政治的意図を含んだ一方的な解釈であり、事実ではなかったのだ(「国連の潘基文事務総長の『悪い癖』」(2013年8月27日参考)。

 その一方、韓国の朴槿恵大統領に対する名誉毀損で産経新聞前ソウル特派員が在宅起訴された問題について、世界のメディア関係者が一斉に「言論の自由」を蹂躙する蛮行と韓国を批判する論調を発表し、韓国に「言論の自由」を守るように要求したが、肝心の国連事務総長はスポークスマンの代行で終始し、母国の言論弾圧に対して沈黙した(「潘基文氏の『名文』とその胸の内」2014年10月31日参考)。

 当方は最近もこのコラム欄で「『中立性の原則』を破った潘基文氏」(2015年6月29日参考)という記事を書いた。その中で「国連事務総長が率先して同性愛者支持の姿勢を示すことは職務上、好ましくない。米連邦最高裁判所は合憲と判断したが、あくまでも米国内の判決だ。世界には同性婚を公認しない国も多数存在する。国連憲章第100条1を指摘するまでもなく、国連事務総長はその職務履行では中立性が求められている」と述べた。

 上記の例からみても分かるように、潘基文氏には「中立性の原則」を無視した言動が少なくないのだ。「抗日戦争勝利70周年式典」への参加決定は、同氏が中立性が求められる国際機関トップには相応しくないことを改めて明確に物語っているわけだ。

 ちなみに、潘基文氏はここにきて次期韓国大統領選に意欲を示している。「潘基文氏が反日言動を繰り返すのは韓国国民を意識しているからだろう」という見方もある。

(ウィーン在住)