アウェー気分の産経裁判
地球だより
産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が韓国の検察に名誉毀損(きそん)で起訴された時、当然のこと(?)ながら加藤氏は韓国社会の中で「悪者」扱いだった。
愚問だとは思いつつ韓国人に「なぜ悪いのか」と尋ねると、彼が書いたコラムが「独身女性の大統領をめぐって口にするのもはばかられるひそかな男女関係を連想させているじゃないか」という趣旨で、随分多くの人からお叱りを受けたのを覚えている。
次に「もしこれが日本人記者ではなく、例えばフランス人記者が書いたものだったら」と水を向けた。すると、一緒にいた男性は「フランス人記者はそんなこと書くわけがない」と取り付く島もなかった。
言ってみれば女性大統領という「聖域」に日本人が「土足」で上がり込んできたようなシチュエーションが韓国人の感情を逆なでした――。当時、少なくとも記者(U)が行った“世論調査”では、こんな韓国人の心理が浮かび上がっていた。
出国禁止解除に伴う帰国の喜びも束(つか)の間、公判そのものはまだ続いている。裁判では「聖域」も「土足」もなしだ。まして「反日」があってはならないし、車両への「卵投げ」に至っては言語道断だ。世論にも歴史にも左右されない韓国司法の良心を信じたいが、アウェーの試合に臨むような「分の悪さ」をどうしても感じてしまう。
(U)