雪のないヘルシンキ


地球だより

 フィンランドに住み始めて20年が経(た)とうとしているが、冬に雪が積もっていない地面を見ることは初めてだ。今冬は暖冬だったので、たとえ雪が降っても積もることはなく、当然雪の代わりに雨の日が多くなった。

 先日、ヘルスセンターへ健康診断に行ってきたが、看護師が、雪がなく雨の多い「グレー」の日々が続いていると言ってひどく嘆いていた。友人にその話をすると、「雪のない冬は、冬ではない」と言って嘆いている人たちは確かに多いとのこと。

 フィンランドの冬の到来の公式定義としては、平均気温が氷点下にならないと冬とは言えない。つまり、ヘルシンキ首都圏は公式的にはまだ冬でないのだ。スポーツ店が冬のスキーシーズンのために準備したスキー用品などが大量に売れ残りそうで、大幅なディスカウントを始めたのもうなずける。

 雪の景色を見たい人たちは、北のラップランド地方に行って冬を楽しむそうだ。そこでは多くの雪が積もっているらしい。しかし、南の首都圏では、もはや、冬に雪を見る機会が少なくなる可能性がこれからも出てきた。毎年2月の中旬以降に「スキーホリデー」と呼ばれる1週間の冬休みも、「スキーホリデー」から単なる「冬休み」と名前を変更せざるを得ない状況だ。

 しかし記者にとっては、雪が積もり、雪が溶けだした頃に再び氷点下となり、その溶けた雪が凍って足元が滑りやすくて何回か転んだことや、駐車場に積もった雪の除去などを思うと、フィンランド人には申し訳ないが、雪が積もらない今冬は楽な冬だった。

(Y)