英国のイメージダウン
地球だより
「出て行きたければ出て行けばいい」。仏大手金融会社の調査部長を務めるポワイエ氏は、2年前、吐き捨てるように私に言った。フランスには、自由主義経済を信奉するビジネスマン、エグゼクティブが多く、ポワイエ氏もその一人。
彼らにとっては、弱者にばかり重心を置く欧州連合(EU)の古い政治体質より、一大金融拠点、シティーを築いた英国の方が優れているとの見方が強い。
ところが最近、同氏にブレグジットについて聞くと、少々苦笑いしながら「決められない民主主義というイメージを世界に与えてしまった英国にはがっかりだ」との答えが返ってきた。
仏大手コンサル会社のIT部門で働く40代のクロワレック氏は「EUは理想ばかり追い求め、急ぎ過ぎて現実が伴わないが、ここまで離脱をこじらせた英国の外交力は、それ以上にわれわれを失望させた」と言った。
製造業の部品調達部門で働くブノワ氏は「今はブレグジットしてから、対策を講じる方が利口だと考えている」と諦めぎみだ。そのブノワ氏も英国の方が合理的、効率的で状況変化にも柔軟性があると評価していたが「政治は違うらしい」と思っているそうだ。
英国生まれでフランスに住む英国籍者約40万人は、一応離脱協定ではフランスに住み続けられることになっている。だが、合意なき離脱となると話は別だ。ノルマンディーに30年以上住む英国人のロザリンさんは「英国には恥ずかしささえ覚える」と言っている。
(M)