アフリカでの「グレートゲーム」はロシアの負けと指摘する米FP誌

◆先行の米を中国急追

 ロシア政府は10月24日、南部ソチで、初のロシア・アフリカ首脳会議を開催、全54カ国が参加した。プーチン大統領は「偉大なロシアの復活」を求めて、アフリカ進出をもくろむが、米誌「フォーリン・ポリシー(FP)」は、「プーチン氏のアフリカ・グレートゲームは始める前から失敗」と酷評している。

 FPによると、ロシアがアフリカに目を向け始めたのは、2014年のクリミア併合で西側から経済制裁を受け、「新たな市場と友好国」を開拓する必要に迫られたため。

 ロシアのアフリカ向けの輸出は、全体のわずか2・7%、アフリカからの輸入に至っては、ロシアの全輸入の1・1%にすぎない。ソチでの会議は、この現状を変えることを狙ったものだ。しかし、「成功のめどは立っていない」。会議中、125億㌦の契約が交わされたとされているが、「そのほとんどは覚書にすぎず、実行されずに終わってしまう可能性がある」からだ。

 アフリカ進出では、米国が先行し、経済圏構想「一帯一路」を進める中国が近年、急追している。

◆現職に接触して失敗

 ロシアのこれまでのアフリカへの関与は失敗続きだ。それは、ロシアが、現地の政治、社会情勢に対して関心を持ってこなかったことが大きく、「倫理的、理性的に疑問を感じるだけでなく、戦略的にもばかげている」とFPは指摘する。米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のジャッド・デバーモント氏は記事中、「現職(政治家)ばかりに接触している」ことが、これまでの失敗の原因だと指摘した。

 南アフリカでは、ズマ政権と原発建設で合意を交わすが、大規模な汚職が発覚し、政権は崩壊、後任のラマポーザ大統領の下で合意は破棄された。

 スーダンでは、長期独裁政権を維持していたバシル大統領に接近し、政権維持を試みるが失敗。バシル氏は現在、囚われの身だ。その他にもマダガスカル、リビアなど同じような失敗例は数多くあるという。

 アフリカの世論調査会社アフロバロメーターによると、「ロシアが、自国の発展の最良のモデルと考えるアフリカ人は、0・0005%」。ロシアがアフリカでいかに信用されていないかを明確に示す数字だ。

 この調査で、発展のモデルとして最も望ましいとされたのは米国が30%で、中国が24%で続いている。ところが、アフリカへの影響力という点で見ると、中国が23%、米国が22%と逆転する。

 失敗続きのロシアに対し、うまく立ち回っているのが中国だ。「相互尊重と不干渉」というクリーンなイメージを前面に掲げる一方で、貿易、インフラ整備などでアフリカ進出を強化、軍事的にもアフリカ諸国と関係を強めている。ジブチに基地を建設し、「ルワンダでは、兵員の訓練を行っている」という。

◆距離を置き始めた米

 一方、米国は、アフリカと距離を置き始めている。

 トランプ米大統領は昨年、アフリカからの米軍の撤収の意向を表明、外交でも、米国のアフリカに対する関心は失われている。「昨年のティラーソン国務長官のアフリカ訪問以降、政権幹部はアフリカを訪問していない。トランプ氏自身も訪問せず、アフリカでも重要な駐南アフリカ大使には、外交の経験のないファッションデザイナーで共和党の献金者を任命した」とトランプ氏のアフリカへの無関心ぶりを批判した。

 「世界最後のフロンティア市場」には米中露以外にも日本など世界が注目している。FP誌は「(互いに足を引っ張り合う)ゼロサムという間違った枠組みではなく、(全ての関係国が恩恵を受ける)ポジティブサムがある」と共存の道を提示している。

(本田隆文)