離島防衛、中国の脅威に対し態勢強化を


 中国初の強襲揚陸艦が上海で進水式を行った。船体の大きさや性能は不明だが、米軍のワスプ級に匹敵する満載排水量約4万㌧で30機のヘリコプターを搭載可能な「075型」とみられる。来年にも就役するという。

 就役すれば、沖縄県・尖閣諸島や台湾に対する脅威がさらに増大しよう。日本は離島防衛態勢を強化すべきだ。

 奪還訓練場の建設を検討

 中国は10月1日、建国70周年を迎えた。軍事パレードでは米国本土を射程に収めるとされる大陸間弾道ミサイル(ICBM)「東風41」を含む多くの新兵器を公開し、強大な軍事力を内外に誇示した。強襲揚陸艦の進水式も、軍事力の増強をアピールする狙いがあろう。

 強襲揚陸艦は主として上陸作戦に使用する艦艇で、戦闘機・各種ヘリの作戦機や上陸用舟艇などを搭載し、全通型の飛行甲板を有するのが特徴。島嶼(とうしょ)もしくは沿岸部の作戦に用いられる小型空母とも評される。中国は最終的に3隻の075型を建造するとの見方もある。

 新華社は同艦について「わが国が初めて自主開発した強襲揚陸艦で、多様な任務を遂行する能力を備える」と報じた。075型が次々と就役すれば、上陸作戦を担当する中国海軍陸戦隊(海兵隊)の戦力が著しく増大し、台湾はもちろん、尖閣をはじめとする日本の離島に対する脅威が一層高まることになる。警戒を要する。

 日本は2002年に「離島防御特殊戦部隊」、昨年3月に水陸機動団、すなわち日本版「海兵隊」を創設。同年10月には、国内で初めて日米の水陸両用訓練が行われた。自衛隊は水陸両用車(AAV7)や輸送機オスプレイなどを、島嶼部に対する攻撃への対応を念頭に導入。迅速かつ大規模な輸送・展開能力を確保し、対処能力の向上を図るとしている。

 一方、防衛省は離島奪還のための陸海空自衛隊の共同訓練が可能な総合訓練場の建設を検討中で、鹿児島県十島(としま)村の臥蛇島(がじゃじま)が候補地となっている。日米合同の離島奪還訓練は頻度が増したが、能力向上を加速させるには、こうした訓練場が欠かせない。艦砲射撃を行う海自艦艇や誘導爆弾を投下する空自戦闘機も交えることで統合運用の実効性も高まる。訓練場の建設を急ぐ必要がある。

 離島防衛に向け、防衛省は20年度末までに、電磁波を使って相手の通信などを妨害する電子戦部隊を、九州・沖縄を担当する西部方面隊の健軍駐屯地(熊本市)に新編する方針を決定した。南西諸島では洋上の段階で離島侵攻を阻止するために、地対艦ミサイル部隊の配備計画を進めている。

 抑止力向上を着実に

 宮古島(沖縄県宮古島市)には、12式地対艦ミサイル部隊と航空機や巡航ミサイルを迎撃する地対空ミサイル部隊が20年3月末までに配備される。駐屯地建設中の石垣島(沖縄県石垣市)にも将来、配置される。

 075型は、事実上の空母に改修される海自のヘリ搭載護衛艦「いずも」(1万9950㌧)よりもはるかに大きい。抑止力を着実に向上させなければならない。