知り合いに、バブル経済の崩壊などで就職難…
知り合いに、バブル経済の崩壊などで就職難にあった「就職氷河期世代」の男性(37)がいる。東京の有名私大卒で、都内の運送会社に就職したが営業が肌に合わず退社。ツテを頼り京都で大工修業し、今は一般住宅の建設や宮大工をしている。
当時、人並みに就職活動をしたが、希望した商社には入れなかった。しかしその後、落ち着く先を見つけた彼などは幸運の部類か。氷河期世代で、今も正規雇用を希望しながら、非正規で働く人は50万人ほどいるとみられる。
生活が不安定なケースが少なくなく、政府は令和2年度予算の概算要求で、彼らの集中支援策に1344億円を計上。正社員で雇用した企業には助成金の拡大などを検討している。
政府としては人手不足を和らげ、彼らの所得向上を通じ消費拡大につなげたいところだ。支援の背景には、収入が不安定な状態の人がこのまま高齢化すれば、生活保護に頼ることになるなど、社会保障費の膨張を招くという危惧もある。
一方、この支援策にどれほど成算があるか、果たして企業の理解を得られるか疑問視する声も小さくない。既に40歳前後になった氷河期世代への支援はやや唐突感もあり、政府の苦況がにじみ出ているというわけだ。
戦後、高学歴化-新卒一括採用-終身雇用を基本とした社会保障制度は国民生活発展の原動力となってきた。だが、ここにきて綻びも見えている。弥縫(びほう)策でなく新しい制度設計を求めたい。