クララ・シューマンは史上最も傑出した女性…


 クララ・シューマンは史上最も傑出した女性音楽家の一人。ロベルト・シューマンが師事したピアノ教師F・ヴィークの娘で、伝説的な恋愛の後、彼の妻になった。が、夫は精神的に不安定でクララが7人の子供と経済を支えることに。

 今年は彼女の生誕200年で、これを記念するバースデー・コンサートが今月13日、東京の紀尾井ホールで開かれた。曲はJ・S・バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻第5番から始まった。

 シューマン、ショパン、クララ、メンデルスゾーン、パガニーニと続いたが、実は彼女の生涯をゆかりの曲でたどった選曲。バッハはヴィーク家のサロンでクララによってよく演奏された曲だった。

 コンサートの主役は二つの楽器だ。クララが使用していたピアノ「グロトリアン・スタインヴェッグ1877年製」と、クララと共演した天才ヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムの使用していたストラディバリウス「ヨアヒム=エルマン」。

 ピアノを弾いたのは三船文子、クララ・ワング、下中美都、三輪美恵、平石那月の5氏で、ヴァイオリンは久保陽子さん。そこにチェロの三船文彰さんが加わった。彼がこのコンサートの企画者だ。

 ピアノの音色は深々として重厚だが、よく歌い、高音域は清らか。19世紀の響きなのだ。一方ヴァイオリンは驚くほどよく響き、超絶技法を駆使したパワフルな演奏。ピアノが最高の花を咲かせた時代を再現した貴重な時間だった。