まさに激走に次ぐ激走であった。来年の東京…


 まさに激走に次ぐ激走であった。来年の東京五輪男子マラソン代表を決める一発勝負レースをテレビ桟敷で見た。一発勝負といっても、選手はすでに高いレベルの基準をクリアしての出場。

 安定し拮抗した実力の選手が同じ条件の舞台に立ち、極度の緊張を強いられる中で長丁場の競り合い。厳しい残暑の中、本番と同じコースでのスピードとスタミナ、駆け引き、勝負強さを懸けての代表争いは見応え十分だった。

 何より代表選考過程が透明化し、分かりやすくスッキリしたことは高く評価できよう。レースは事前に4強の一人とされた設楽悠太選手がスタートから飛び出した。

 中間点で2位集団との差を2分余と引き離したが、その後失速。37㌔すぎで2位集団に抜かれた。

 終盤は2位集団から抜け出した4強の大迫傑と服部勇馬、そしてダークホースの中村匠吾の3選手に絞られると、手に汗握るデッドヒートとなった。急坂を前にした39㌔で中村選手がロングスパートを仕掛け、大迫選手に41㌔で追い付かれると、2段スパートをかけて再び引き離す。坂と暑さが選手を苦しめるラスト2・195㌔を何と6分18秒の驚異的なタイムで走り抜いたのだ。

 日本記録保持者の大迫選手だが、すでに力を使い果たしていた。42㌔手前で最後の力を振り絞って追ってきた服部選手をかわせず、2人目の代表内定も逃した。勝負は非情だが、選手それぞれ全力を出し切った清々(すがすが)しさが印象深かった。