わが国近年の歴代ノーベル賞受賞者が、口を…


 わが国近年の歴代ノーベル賞受賞者が、口を揃(そろ)えて「基礎研究」充実の必要性を訴えている。来年度政府予算で科学技術予算の増額をぜひ実現させたい。

 政府の支援の方向は二つあって、一つは日本の大学全体の研究力アップに資する運営費交付金の付与。もう一つは有望な研究対象を決め、重点的に投資するもので、iPS細胞を使った再生医療や素粒子解明のための次世代大型加速器「ILC(国際リニアコライダー)計画」などがある。

 ILCは全長20㌔以上もある直線型加速器を造り、電子と陽電子を光速近くまで加速させてビッグバン直後の宇宙を再現する実験計画。湯川秀樹博士以来、世界をリードしてきたわが国の素粒子物理学の総仕上げとなる成果が期待される。

 ところが、この計画に真っ向から反対する組織がある。日本学術会議(会長・山極壽一京都大総長)で、4000億円以上の初期投資に対し経済効果は限定的だと主張し、昨年末に「誘致を支持するには至らない」との声明を発表した。

 同会議は、防衛省が助成している軍事と民生の両方に応用可能なデュアルユース(軍民両用)の基礎研究にも反対している。「大学は防衛省からの資金を受け取ってはいけない」という空気をつくっている。

 だが、研究対象の選択は研究者自身におおむね任せるべきで、学問の自由の原則に反している。学術会議は意見の多様性を認めず、特定の見解を研究者に押し付けている印象が強い。