自己人工授精で出産した女性カップル登場させLGBTの暴走あおるNHK

◆子供の人権を考えず

 性の問題を倫理・道徳から切り離し、恋愛や結婚に対して個人の権利からアプローチするのが、いわゆる「LGBT」(性的少数者)支援の基本だ。この考え方からすれば、男女の結婚も“同性婚”も同等の価値になるばかりか、どんな人間関係になったとしても、それは「多様な家族の形」「新しい家族の形」であり、どのような形を選ぶかは「自己決定」に任せられるべきだとなる。

 この考え方の危険性については、恋愛・結婚の当事者だけの権利に目を奪われていては気付かないかもしれない。しかし、生命の尊厳や生まれてくる子供の人権という観点を加えた時、背筋が凍るような問題点がはっきり見えてくる。

 NHK総合に「NET BUZZ(ネットバズ)」(毎週木曜深夜放送)がある。ネットバズとはネットで話題となったという意味で、この番組はネット上で反響のあった番組を再放送し、その反響を紹介する内容。

 今月13日放送で取り上げたのは、Eテレの「ねほりんぱほりん」の5日放送「LGBTのカップル」だ。この番組は、訳あって顔を出せないゲストがブタに、聞き手のタレント2人がモグラ(ねほりんとぱほりん)に扮(ふん)して、人形劇と赤裸々なトークを繰り広げるのが売り。

◆「自己決定」を乱用

 ゲスト出演したLGBTというのは、同じ保育園に勤めるというレズビアン(女性同性愛)カップル。付き合って10年になり一緒に暮らしているという。レズビアンであることを隠して生きる苦しみや親との葛藤などを述べた後、二人は衝撃の事実を告白する。二人ともそれぞれ子供を生み、4人で生活しているというのだ。

 5歳と3歳になる娘には当然父親がいるが、それが同じ人物だという。つまり、娘2人は異母姉妹で、それぞれの母親同士がレズビアンカップルという、常識ではあり得えない関係だ。しかし、LGBT支援の考え方からすれば、これも「新しい家族の形」ということになるのだ。

 なぜ、こんなことになったのかと言えば、レズビアンでも人工授精に頼れば出産できるが、わが国では病院で人工授精できるのは結婚しているカップルに限られる。そこで二人が使ったのはネットで探した“精子バンク”。そこで1人の男性を見つけ、その男性が二人に精子を提供したという。

 それだけでも驚愕(きょうがく)の事実だが、さらに信じ難いのは、自力での人工授精の方法だ。精子は冷えると死ぬそうで、渡されてからすぐに自分の生殖器に入れるため、自動車の中で注射器のような用具を使ってそれを行ったという。

 性的少数者にも権利があるといっても、ここまでやってはもはや自己決定の乱用だが、さらに驚いたのはそれを非難しない番組ナレーション。自力による人工授精は「法律上は問題ないものの、性感染症のリスクや親権をめぐるトラブルなどが指摘されている」とするだけで、女性カップルの行為は生命の尊厳と子供の人権を踏みにじる反倫理的行為であることについては触れないのだ。

◆神をも恐れない行為

 以前にもこの欄で指摘したが、夫婦の間に第三者の精子を使って生まれた子供でも、その事実を知れば、自然な夫婦の営みから自分が生まれたのではなく、親のエゴで人工的につくられたという思いから、自己のアイデンティティー形成が難しくなる場合が少なくない。ましてや、レズビアンカップルによる自力人工授精だ。それを知った時の子供の苦悩を考えれば「これも多様な家族の形」とは到底言えまい。

 「ねほりんぱほりん」の番組内容を見れば、バズったことは想像に難くないが、再放送の後、「NET BUZZ」の司会者は次の二つのコメントを紹介しただけだった。

 「人工授精でも必ず妊娠するとも限らないわけで…神さまがくれたプレゼントなんだろうな」「二人で育てている子供たちが、いらぬ言葉を聞かされたりせずいらぬ苦労をさせられない世の中にもっとなっていくといいよね」

 「子供をつくる方法、生んだこと、かなり驚いた方、多かった」と、司会者が言うのだから、その中にレズビアンカップルの行為を非難、あるいは疑問を呈する声がなかったとは考えられない。「神をも恐れぬ行為」との糾弾があっても不思議ではない女性カップルを登場させた上、それを支援する声しか紹介しないのだから、NHKのLGBT支援もついにその本性を現したと言うべきだろう。

(森田清策)