波紋が広がるアメリカンフットボールの悪質な…


 波紋が広がるアメリカンフットボールの悪質なタックルの問題で、識者らが一様に説くのは、日本大の初動対応のまずさだ。

 テレビで繰り返し流される問題のタックルの映像を見ると、重大な反則行為であるのは一目で分かる。ところが、日大の内田正人前監督は「自分は(反則現場を)見ていなかった」と言い開きをしている。

 では、コーチなり、それに類する立場の人たちはこの間、何をしていたのか。「監督、これはまずいですよ」とその場で告げるか、少なくとも試合直後にそうすべきだった。

 それもできず結局、悪質タックルを行った選手を追い詰めたのは、学生・選手とコーチとの間のみならず、コーチと監督との間の意思疎通ができていなかったからだ。日ごろ営々と積み重ねるべき教育的配慮の欠如が目に見えて現れた不祥事である。

 サッカーやラグビー、アメフットに至るフットボールの起源は19世紀の英国。「『非労働時間』の生活史―英国風ライフ・スタイルの誕生」(川北稔編)によると「これらの集団スポーツは、集団の協調精神、フェアプレイの精神、男らしさを涵養する有用な教育手段」と考えられた。

 またフットボールは当時、英国の工業化で余暇を利用する人々の生活と密着して発展し「(学生に対しては)スポーツはあくまでも学業の余暇に行われるリクリエーション」(同書)だったという。今こそ、このような学生スポーツの原点に立ち返る時だ。