中国のアフリカ進出は現地経済に貢献せず足かせになると専門家警告

◆権益確保へ軍を投入

 「一帯一路」の旗の下、ユーラシア大陸への経済進出を進める中国は、アフリカへの進出をも意欲的に進めている。だが、開発に伴う巨額の融資は現地の経済の足かせとなる可能性がある一方で、権益保護のため軍事力も投入されていると専門家は警鐘を鳴らす。

 ニュースサイト「オール・アフリカ」は、中国映画「戦狼2」の上映会が最近、米ワシントンで行われたのを受けて、「中国のアフリカ経済進出とともに、軍の存在感が増している」と、中国のアフリカ進出の現状を伝えている。

 中国版「ランボー」と揶揄(やゆ)されている戦狼2は昨年夏、公開され、中国映画としては過去最高の興行収益を上げるなど、大きな反響を呼んだ。活躍するのは、心優しく、めっぽう強い中国の元軍人。舞台がアフリカとされたのは、進出する中国企業が多い現状を反映したものでもあり、経済的、軍事的に強い中国の建設を目指す習近平体制を後押しする「国策映画」と言っていいだろう。

 記事は「大陸全体で経済的関与を深めるとともに、軍による存在感も静かに増している」と、軍民による中国のアフリカ進出が進んでいることを明らかにしている。アフリカ東部、紅海の入り口という要衝に位置するジブチで昨年、海軍基地の運用を開始したのもその一環だ。

◆PKOを隠れみのに

 南アフリカのアフリカ専門研究機関、安全保障研究所のコンサルタント、ピーター・ファブリシウス氏は「歴史的に中国は、国連の平和維持活動(PKO)への貢献を通じて、アフリカの安全保障に関わってきたが、…国連への関与を権益保護に利用してきた」と平和維持活動が軍事プレゼンス確保の隠れみのに利用されてきたと指摘している。

 石油産業に深く関わっている南スーダンで中国は、「国連南スーダン派遣団(UNMISS)に700人の兵員」を派遣。中国に大量の銅、コバルトなどを供給しているアフリカ中部のコンゴ民主共和国では、「国連コンゴ民主共和国ミッション(MONUSCO)に220人を送り込んでいる」という。

 記事はさらに、「最近、直接的な軍事行動の意思を示した」と、国連の枠組み以外での中国軍による活動が活発化していると指摘する。

 中国海軍の艦艇が、インド洋でソマリアの海賊を監視、捕獲し、ジブチでは昨年、流通拠点とともに初の海外軍事基地を開設したばかりだ。

 ジョンズ・ホプキンス大学高等国際関係大学院中国研究所のデービッド・ランプトン所長は「中国の世界での権益は増加し、中国は現地の中国人を保護する権利があると考えている。それは、中国の介入の強化につながる」と、今後いっそう、中国のアフリカへの関与が強まると予想する。

 欧米諸国は、人権問題を理由にアフリカへの支援、投資を控えてきた。政情が不安定であることも企業が進出しにくい要因となっている。その一方で、中国はアフリカへの、投資、融資、援助を行っているが、巨額である上に、ひも付きであることも多いという。

◆デットトラップ外交

 ファブリシウス氏によると、中国は被支援国に、中国本土と台湾が同じ国に属するとする「一つの中国」政策の受け入れを迫り、インドに亡命しているチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世にビザを発給しないよう求めるなど、露骨な政治利用がみられるという。

 また、アンゴラでは、将来の石油開発の権利が開発援助の条件とされ、ジブチやケニアなど東アフリカでも、「融資返済が困難になれば、中国への独占的な権利の提供につながる可能性がある」とファブリシウス氏は警告する。

 米ニュースサイト「クウォーツ・アフリカ」は、中国の開発途上国への巨額融資について「デットトラップ(債務のわな)外交」と指摘、現地経済への悪影響を指摘した。

 今月に入って、アフリカのチャド、ジブチ、エチオピアなどを歴訪したティラーソン米国務長官は、「中国の投資は、債務の増加につながり、雇用増にはほとんど貢献していない」と述べた。

 昨年、スリランカが中国への10億ドルの債務をかたに、中国政府系企業に南部ハンバントタ港の運営権を99年間貸与することを決めた。デットトラップの典型だ。

 クウォーツは、「8カ国が中国のデットトラップにつかまる危険がある」と指摘、その中にジブチとモルジブのアフリカ2カ国が含まれている。

(本田隆文)