エルサレムのイスラム教聖地に金属探知機
対イスラエル抗議が拡大
エルサレム旧市街にあるイスラム教の聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)にイスラエル警察が金属探知機を設置したことにイスラム教徒が反発、反イスラエル抗議行動が拡大している。イスラエル政府は25日、事態の収拾へ探知機を撤去したが、対立が収束するかどうかは不透明だ。(エルサレム・森田貴裕)
ヨルダンなどの要請で撤去も収束は不透明
発端は、エルサレムで14日に発生した銃撃事件。旧市街のライオン門近くで、武装したアラブ系イスラエル人の男3人がイスラエルの警官を銃撃し、警官2人を殺害した。襲撃者3人は、治安部隊に射殺された。
事件を受け、ネタニヤフ首相は緊急安全保障会議を開き、聖地の封鎖を指示、金曜日に通常行われるイスラム教徒の集団礼拝は中止された。
イスラエル警察は15日、武器が隠されている疑いがあるとして、アルアクサ・モスクなど聖地内の全建物の捜索を行った。
聖地の封鎖と警察による捜索に、聖地を管理するヨルダン宗教当局が強く反発。イスラエルのイスラム教指導者とヨルダン宗教当局は、「占領イスラエルの犯罪」「イスラム教徒の礼拝の自由を侵害した」とイスラエルを非難、聖地とアルアクサ・モスクを直ちに開放するよう求めた。
これを受けてイスラエル警察は、聖地の入り口への金属探知機の導入を提案。アラブ諸国を過度に刺激することなく、右派有権者の支持も得られると考えた政府は、導入を決定した。探知機の設置を受けて16日、イスラム教徒の50歳未満男性以外の入場を許可した。
ハラム・アッシャリフの敷地内には、「岩のドーム」とアルアクサ・モスクがあり、イスラム教徒にとってはサウジアラビアのメッカとメディナに次ぐ第3の聖地。ヨルダン宗教当局は、警察の活動を非難し、イスラエルに対し探知機の撤去を繰り返し要求した。
イスラム教指導者らは、探知機の通過を拒否するよう呼び掛け、数千人のイスラム教徒が敷地の外の通りで礼拝を行った。パレスチナ人とイスラエル治安部隊が連日衝突し、パレスチナ人に多数の負傷者が出ている。
パレスチナ自治政府のアッバス議長は、クシュナー米大統領上級顧問との電話会談で、状況は「非常に危険であり、制御不能となる可能性がある」と、米国に介入を求めた。米政府は声明で、「イスラエルとヨルダンが、公共の安全と現場の安全を保障し、現状を維持する解決策を見つけることが重要だ」と鎮静化を求めた。
パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスは、インターネット上で、写真やビデオを通じ、エルサレム、ヨルダン川西岸、ガザ地区で、聖地防衛のための大規模な抗議活動を行うよう呼び掛けた。
警察は、抗議行動の拡大を阻止するため、旧市街近くの通りを封鎖し、警官約3000人を配備。東エルサレムとヨルダン川西岸の数十カ所で21日、集団礼拝後、治安対策に抗議するパレスチナ人約3000人と治安部隊とが激しく衝突し、パレスチナ人3人が死亡、300人以上が負傷した。ヨルダンの首都アンマンでも21日、数千人が探知機設置への抗議デモを行った。
アッバス議長は21日の声明で、「イスラエル側との全ての接触を停止する」と発表。ヨルダン川西岸の入植地ハラミシュでは21日、パレスチナ人がユダヤ人の家族を襲撃し、3人が刺殺されるなど、パレスチナ人の反発は強まっている。
大規模な民衆蜂起の可能性も指摘されており、イスラエルは25日、探知機を撤去、早期の収束を図りたい考えだ。