「退位」最終報告、「天皇陛下」表記で合意点を探る努力を求めた読売

◆「二重性」回避を評価

 「天皇陛下の退位問題は、詰めの段階に入ったと言えよう」(読売・社説22日付)。

 天皇陛下の退位を実現する特例法案の最終骨子案が24日に固まった。政府・自民党が、3月に衆参両院議長らが与野党協議を経てまとめた国会提言をほぼ踏まえた内容に修正したものとなった。

 一方で、政府が設置した「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」も最終報告書をまとめ、この21日に安倍晋三首相に提出した。退位後の天皇、皇后両陛下のお立場や称号・敬称や、皇位継承順位1位となられる秋篠宮殿下の呼称などに言及した報告書は、法案に反映されるものになる。政府は与野党の合意を取り付けた上で、5月後半に国会に提出する見通しである。

 有識者会議の報告書が出たことについて産経・主張(22日付)は「陛下を敬愛する国民の願いは、譲位の実現によって、多年のご心労を少しでも解いて差し上げることだろう。/滞りなく法案準備を進め、今国会で成立させることが最も大切である」と説く。

 報告書について、新聞論調が評価した内容は少なくない。退位後の両陛下の呼称はそれぞれ「上皇」「上皇后」とし、上皇が摂政に就いたり、再即位したりする資格を持たない。被災地訪問など象徴天皇としての公的行為は、全て新天皇に譲るのが適切と提言した。これについて「新旧天皇の権威が並び立つ弊害を防止する観点から、いずれも妥当な内容だろう」(読売)、「象徴の二重性を回避する観点から妥当」(毎日・社説22日付)、「象徴としてのお努めは全て新天皇に譲られるとしたことはもっともだ」(産経)などというものだ。

◆「一代限り」に警戒心

 報告書が大局的観点から皇族数の減少について、すみやかな議論を促したことにも読売、日経(同22日付)、産経、朝日(同22日付)、毎日、小紙(同23日付)が評価した。小紙は「旧宮家の皇籍復帰の選択肢も排除せずに検討すべきだろう」と言及。この問題は「退位問題とは別に、政府には前向きな取り組みが求められる」(読売)のである。

 こうした一方で、日経がいう「新しいかたちの退位へ向けた制度設計は、世論の後押しもあって着実に進んでいるようにみえる。しかし、残る課題も多い」のも事実。その上で「くれぐれも政争の具にしないよう、議論を深め」て、残る課題の解決に政府、国会が全力を挙げるよう求めたのは妥当である。

 残る課題の一つに日経が挙げたのは、国会の議論で各党が歩み寄った、皇室典範の付則に「特例法は、典範と一体をなす」と明記することになった経緯ついて。「退位は例外的措置と位置づけ、同時に特例法が将来の退位の先例としても機能し得ることを示した合意だ」だという。ところが、国会提言で「天皇の退位等に関する皇室典範特例法」とした特例法の名称が、法案の骨子案では「天皇」を「天皇陛下」としていることで一部の反発を気にする。「退位容認は一代限りとする趣旨が鮮明になったのでは、との指摘がある」というのだ。

 日経はこの相違を気にする程度だが、毎日は「国会見解に比べ陛下一代の退位を強調する表現になっている」のは政府の対応に問題があると指摘。朝日は「いま政府はこれ(国会提言)に反する特例法骨子案をまとめ、押し返そうとしている」と警戒し、政府に「振り付けられたとおりに動くしかない。そんな『有識者』会議になってしまった」と残念がる。

◆表記の見解分かれる

 一方、骨子案の「天皇陛下」表記について読売は「恒久的な退位制度が、恣意的な退位などを招く恐れがあることを考えれば、これもうなずける」と理解を示した。小紙も「制度の柱の部分の改変には慎重でなければならない。退位に関する恒久的な制度をつくることを避け、一代限りの特例法とする政府の案は妥当」だと支持し、見解が分かれた。

 前記の産経も触れているが、読売は、骨子案が退位の理由の一つを挙げた「国民は陛下のご心労を理解、共感している」ことに留意して、今後の国会審議でも「合意点を探ってもらいたい」と求めた。同感だ。こと天皇陛下の退位についての特例法に関しては、国民の共感を考え、政争の具とせずに政府・国会一致による実現を図ることが最も望ましいのである。

(堀本和博)