月刊朝鮮に移民推進論 高齢化で嫁と労働力が不足
多文化説くも課題多い民族性
韓国は日本に迫るほど高齢化が進んでいる。さらに少子化も深刻だ。ソウル駐在の同僚が、「『兄弟が5人いるというと、クラスで笑われる』と現地校に通っている息子が言っていた」という。最近の韓国人カップルはほとんど1人、2人しか子供を持たないので、珍しがられるのだ。
少子高齢化が進めば、労働力不足が生じる。高学歴社会は晩婚化を招き、田舎では「老総角(ノチョンガク)」(チョンガク=独身男性)が増え、嫁不足がこれまた深刻な状況になっている。
韓国が労働力と嫁を外国人に頼り出したのは1990年代中盤以降のことだ。その後増え続け、外国人労働者や嫁の人口がこの10年間で3倍に増えて200万人、人口の4%に迫るという。
だが、「単一民族」を誇る韓国人社会が外国人を大量に受け入れて、問題を起こさないはずがない。実際、外国人労働者が「奴隷労働」させられたと事件になることはしばしばだし、男尊女卑の考えが残る農村で、言葉も風習も分からない外国人嫁が韓国の嫁姑関係や近所付き合いで悩んだり、夫から暴力を振るわれ、中には命を落とすといった痛ましい事件まで起こっているのだ。
東南アジアの一部では、自国女性に「韓国人との結婚」を禁止する国がでてくるほど、韓国での外国人妻の人権が国際問題として拡大したこともあった。
もちろん、韓国政府が座視しているわけではない。「多文化社会」と定義して、各種の法整備や国民への啓蒙に努めてはいる。しかし、「憂鬱(ゆうつ)な評価をせざるを得ないのが多文化韓国の姿だ」というのは「月刊朝鮮」(1月号)である。「政策提言、多文化・女性政策飛び越える移民政策必要」の記事を載せた。
同誌は「良質の外国人労働者流入はなされておらず、家庭内暴力など結婚移住女性(外国人妻)の人権問題は相変わらず続いている。外国人犯罪と多文化家庭の解体(離婚)は急速に増えている」と伝え、「韓国政府の多文化政策はこれに対する明確な解決策を提示していない」と厳しく批判する。
その原因は、「明確な国家戦略に沿った外国人受入れではなく、対処療法式の多文化政策を繰り広げるのに汲々としていた」からだ。
そうこうするうちに、「反多文化情緒が無視できないほど形成」されてきた。つまり反外国人感情である。「人種差別意識や排他的国粋主義的要素もあるが、爆発性が大きい“反多文化情緒”が広がって行くことは深刻な問題にならざるを得ない」と危惧する。
韓国では2017年に「人口の絶壁」を迎えるという。この後には人口減によって消費がピークを過ぎて減っていくのだ。人口減少を抑えるために「移民政策」に取り組まなければならないが、「青年失業が蔓延(まんえん)しているのに、何の移民政策か」といった反発もある。それでも、「移民を受け入れるほかない現実」だ。
ここで同誌は移民政策として、「国家戦略、国政哲学を確立し、コントロールタワーを立てる」「定住外国人への差別と排除を除去」「偏重サービスの見直し」などを行い、「移民政策の法的制度的枠組みを整備」することを提言している。どれも当たり前のことであり、既に手を付けられていなければならないことだ。
同誌はまた、「点数制とクォーター制」の導入を提案する。点数制とは移民の能力を測るもので、いわば資格や能力のある人材を選別的に受け入れるというものだ。クォーター制は特定国出身者が大多数を占めないようにする調節弁である。
もっとも、法的制度的枠組みが整えられても、“情緒”が対応できるかどうかが、韓国が移民政策を成功的に進められるかどうかの分かれ道となる。「わが国最高」という彼らの優越感に辟易している途上国出身の「多文化構成員」も多い。同族の中国朝鮮族でさえ、韓国人の“上から目線”に反発を抱くことがしばしばだという。これらが解決されない限り、問題はいつでも噴出する。
韓国の移民政策は、将来の日本にとっても注目すべき試みだ。
編集委員 岩崎 哲