鶴竜一人横綱の責任果たす、最後は巧みな攻め
大相撲秋場所で、横綱9場所目で優勝
いくつもの重荷を下ろし、表情には安堵(あんど)と疲れが入り交じった。優勝決定戦で照ノ富士を下した鶴竜は「この瞬間のためにやってきた」と、かみしめるように話した。
本割では手負いの大関の気迫に圧倒された。突かれて上体が起き、寄られて完敗。「また駄目かと一瞬思った」。だが、決定戦は低い姿勢で攻めた。両前まわしを引いて頭をつけ、迷わず出し投げを打つ。「自分の相撲を取り切って終わりたかった」。前日の稀勢の里戦では立ち合いに変化して批判を浴びたが、最後は鶴竜らしい技の切れを見せつけた。
昨年夏場所で横綱に昇進した後は、2度目の賜杯が遠かった。今年は左肩のけがで2場所全休。白鵬と日馬富士が休場した今場所は「一人横綱」の重圧に苦しんだ。10日目には2敗に後退したが、「ある意味、吹っ切れて力が抜けた」。照ノ富士に2差をつけられ優勝戦線から一時的に外れたことは、硬さがほぐれるきっかけにもなった。
横綱になって初めての賜杯。師匠の井筒親方(元関脇逆鉾)は「これで気持ちに余裕が出るのかな」と期待する。いつも控えめな鶴竜も、はっきりとした口調で「先が見えてきた」。トンネルを抜けた心境のようだった。