北京の画家・劉毅氏、チベットの悲劇描き続ける


自殺者の「絵画通じて真実伝えたい」

北京の画家・劉毅氏、チベットの悲劇描き続ける

死者・行方不明者が2900人以上に上った2010年の中国青海省玉樹チベット族自治州の地震を題材にした北京の画家、劉毅氏の絵(劉氏提供・時事)

 中国チベット自治区成立から50年を迎え、共産党・政府は8日、区都ラサで大規模な祝賀大会を開催した。一方で近年は、当局のチベット政策に抗議して、チベット族住民が焼身自殺を図る悲劇が続いている。北京の画家、劉毅氏は命を絶った一人ひとりの顔を描き、歴史に残す作業を続けている。劉氏は「絵画を通じて真実を伝えたい」と語る。

 チベット自治区や四川、甘粛、青海省などのチベット族居住区では2009年2月以降、相次ぎ焼身自殺を図った約140人のうち約120人が死亡した。当局の抑圧に不満を持つ僧侶らがラサで起こした08年3月の大規模抗議以降、チベット族に対する締め付けは一層強まり、自殺者の多くは「(チベット仏教最高指導者)ダライ・ラマ14世の帰還を」などと叫んで自らに火を付けた。

 中国国内ではチベット族の焼身自殺に関するニュースは報道されない。劉氏は海外のニュースサイトに報じられた自殺者の小さくぼやけた顔写真を拡大し、力強い線を走らせた。

 劉氏はこう話す。「中国現代芸術に最も欠けているのは真実だ。中国は非常に不公平で、正義の空間を広げなければならない。だから絵を通じて真実の記録を表現したい」。

 劉氏が描くのはこのほか、1989年の天安門事件で武力弾圧された民主化運動に参加した学生らや、08年の四川大地震の際、当局と癒着した建設業者による手抜き工事で造られた校舎の倒壊により、埋もれて犠牲になった子供たち。権力によって虐げられた「悲劇」を描き続ける。(北京時事)