「水音も風の音にも九月かな」(副島いみ子)…
「水音も風の音にも九月かな」(副島いみ子)。季節によって川や雨、風の音の強さが違うというのは、言われてみるまで案外気付かない。
原因はさまざまあるだろうが、その一つとして季節の間に温度差があることが考えられる。川の場合、春は雪解けで流れが緩やかになるので音はささやくように低く、夏はかなり早くなるために高くなり、そして秋にはまた温度が下がって音も低くなる。
風の音も川と同じようなことが言える。もっとも、それは感覚的な違いかもしれない。背景にあるのは、日本人が伝統的に育んできた精神文化である。水や風の音に音楽的なものを感じるのは、和歌や俳句などにも反映されている。
環境省による「残したい“日本の音風景100選”」というものがある。その選定の基準が面白い。
「自然環境だけではなく、文化や地場産業が形成する音風景も含めた、幅広い内容」「鳥の声や昆虫の羽音などの<生き物の音>から、川の流れや海の波などの<自然の音>、祭りや産業などの<生活文化の音>」(環境省ホームページ)まで多岐にわたる。
例えば、「オホーツク海の流氷」「時計台の鐘」(北海道)、「ねぶた祭・ねぷたまつり」(青森)、「宮城野のスズムシ」(宮城)、「大井川鉄道のSL」(静岡)、「阿波踊り」(徳島)、「伊万里の焼物の音」(佐賀)などバラエティーに富んでいる。そろそろ秋の演奏家・スズムシの声も聞こえてくる季節でもある。