有名学習帳の表紙に使われている昆虫の写真は…


 有名学習帳の表紙に使われている昆虫の写真は気持ちが悪いとの声が寄せられ、製造メーカーが排除していたのが、最近になって復活したという報道があった。気持ちが悪いという感情は分かる。だからといってノートの表紙から抹殺するのは理解に苦しむ。ともかく、復活したのは結構な話だ。

 平安時代後期の物語集『堤中納言物語』には「虫めづる姫君」という短編が収録されている。主人公は身分の高い家柄の姫君だが、とにかく虫が好きで、化粧もお歯黒もしない。女性の「虫好き」は少ないと言われる。どうやら彼女には実在のモデルがいたらしい。

 俳句で虫が題材となることは多い。その場合、大抵は「季節の中の虫」がテーマとなる。虫は季語として登場するから、季節感が重要なのは当然だ。鳴く虫が多く出てくるのもそのためだろう。

 結果として、俳句で見られるのはセミやトンボや蝶などに限られてくる。「虫好き」の間で人気の高いオサムシやマイマイカブリが詠まれることはめったにない。

 「虫好き」は、人間社会の中で自身が決して多数派ではないことをよく承知している。虫の嫌いな人が多いことをかみしめながら成長した経験を持つからだ。

 もちろん、好き嫌いはどうしようもないだろう。しかし、嫌いだからといって目の前から排除すればそれでいい、という話にはならない。人間より歴史の古い彼らもまた、自然の重要な一部なのだから。