「俳句も文学。文学は人生の経験からしぼり…


 「俳句も文学。文学は人生の経験からしぼりだした知恵によって書くものだろうから、その経験もない子供に多くを求めることは出来まい。ただその子供の胸の中に詩歌、俳句の種をまいておくことが大切なのである」。

 俳人の故・石原八束さんは、子供たちの俳句を5年間、見続けたことがあった。某学生雑誌で俳句部門の審査を担当していたからだ。その感想を「小・中学生と高校生の俳句」(『石原八束俳論集』)に綴(つづ)った。

 教師が名句を子供に理解させ暗唱させることは意外な成果がある、と勧めた。子供にはまだ俳句を作るべき切実な欲求など起きていないが、教師が子供に「詩の種をまくこと」の重要性を訴えた。

 俳人協会は、俳句文学館のある東京都新宿区百人町で夏季親子俳句教室を開催。その作品集が出来上がった。吟行地は百人町ふれあい公園で、ヒマワリ、セミ、ヨーヨー、小川、アゲハチョウなどが詠まれた。

 27人の子供たちと保護者らの作品が収録されている。「貝風鈴きれいな音は海の音」。三宅なつ穂さん(小学4年)の作品だ。大人とは違った言葉遣いが面白い。保護者では大坪正美さんの「風ばかりすくひ真白き補虫網」という句が高得点。

 自然にふれて感性を発揮することは、子供たちにとってストレス解消にもなったようだ。この夏、小中高校教員のための俳句指導講座も開催されている。どのような詩歌の種をまくかは、彼らにかかっているのだ。