タイ政府は、同国に不法入国し身柄を拘束…


 タイ政府は、同国に不法入国し身柄を拘束されていたウイグル族100人近くを中国に送還したと発表した。習近平政権の弾圧を逃れてきた彼らが、どんな目に遭うかは目に見えている。国連難民高等弁務官事務所が「目に余る国際法違反」とタイ政府を批判するのも当然だ。

 トルコのイスタンブールでは、抗議行動がエスカレートし、タイの公館が襲撃された。同地では、中国当局がイスラム教のラマダン(断食月)の宗教行為を禁じているとして抗議デモが起き、中国人に間違われた韓国人旅行者が襲われる事件も起きている。

 トルコ人がウイグル族弾圧を非難するのは、同じイスラム教徒であるだけでなく、同じルーツを持つテュルク系の民族だからだ。トルコ人は中央アジアから西に移動して今の国をつくった。

 ユーラシア大陸の中央、東のウイグルから西のトルコの間には、ウズベキスタンやトルクメニスタンなどテュルク系の国家が帯状に存在している。

 中国は新シルクロード経済圏構想を打ち出し、アジアインフラ投資銀行の設立を通して、この地域への梃子入れを強化しつつある。経済的影響力を高めることで、ウイグル問題とも絡み、将来的には安全保障上の脅威となりかねないこの地域へ布石を打つ狙いもあるに違いない。

 日本が忘れてならないのは、これらの国々がみな親日国であること。それを念頭に、戦略的外交を展開していくべきだ。