「これよりの梅雨の憂き日の一日目」(稲畑…


 「これよりの梅雨の憂き日の一日目」(稲畑汀子)。気象庁が関東甲信地方の梅雨入りを発表したのが8日。ただし、その表現は「梅雨入りしたとみられる」というアイマイなもの。

 こうした自然現象は、はっきりした線引きが難しいのかもしれない。そういえば、夜と朝も境目が分かりにくい。いつの間にか空を覆っていた暗闇が晴れて、気付いたら朝の明るい光が広がっている。

 一年の中でも、あまり人気のない時期の一つが梅雨ではないだろうか。冒頭の俳句にあるように、感情が後ろ向きになり憂鬱(ゆううつ)な気分が続く。長雨によって外出が億劫(おっくう)になり、しかも、物が腐ってカビも生え、食中毒などにもかかりやすくなるからだろう。

 人間は心理的にも太陽の光の影響を受ける。例えば陽光のあふれた地中海では、ポジティブで陽気なラテン系の気質が生まれ、あまり陽光の恩恵を受けない北欧などは、性格的にも重厚になりやすいと言えまいか。

 気候が人間の性格形成に影を落としているのは間違いない。ところで日本人は、あいさつで「今日はいい天気ですね」「あいにくの雨ですね」と天気を話題にすることが多い。

 無難な話題ということもあるが、それだけではない。背景には、日本は季節によって空模様が変化するため、さまざまな言葉で表現する伝統文化が豊かということもある。その意味では、雨が続く梅雨が敬遠されがちなのもうなずける話である。