とっさの攻め、逸ノ城が挑戦5度目で白鵬破る
白鵬は不覚の初日黒星、「恩返しされたかな」と笑み
座布団が乱舞する光景が、最初はぴんとこなかったのだろう。挑戦5度目で白鵬に土をつけた逸ノ城の表情が、引き揚げる花道で少しずつ和らぎ、支度部屋に戻ってようやく笑みに変わった。
かち上げて突き放すつもりが、ふわりと立ってしまった。横綱に浅く上手を引かれ、「このままだといつもみたいになる」。迷わず右の差し手を引き抜き、小手に振るような突き落とし。意表を突かれた白鵬が思わず土俵に手をついた。
新入幕の昨年秋場所で13勝を挙げた後は、取り口を研究されて苦戦。先場所は13勝と大活躍したライバル照ノ富士の陰に隠れてしまった。勢いを取り戻そうと場所前は出稽古先などで白鵬に胸を借りた。「最初(の注目)だけで終わってほしくない」という横綱の檄(げき)に応え、本土俵で恩を返した。
とはいえ、横綱が力相撲に備えてまわしを引き、一瞬安心したところの奇襲だからこそ突き落としは決まった。そこは本人も分かっており、照れくさそうに「うれしい。たまたま勝っただけだけど」。ついに白鵬を倒した喜びに浸るばかりではなかった。