「マリンピア松島水族館」閉館、88年の歴史に幕


太平洋戦争や東日本大震災を乗り越えて人々を楽しませる

「マリンピア松島水族館」閉館、88年の歴史に幕

閉館前のマリンピア松島水族館を訪れ、ペンギンを見る入場客=4月26日、宮城県松島町

 宮城県松島町の「マリンピア松島水族館」が10日、88年の歴史に幕を下ろし閉館する。太平洋戦争や東日本大震災など苦難の時を乗り越えて、人々を楽しませてきた施設に、閉館を惜しむ多くの人が連日訪れている。

 松島水族館が開館したのは1927年。太平洋戦争で一時閉館したものの、その後スナメリやマンボウの展示で人気を博し、80年代には年間入場者数が80万人を超えピークを迎えた。同一の場所に現存する水族館としては日本最古という。

 2011年の東日本大震災では津波が押し寄せ、施設の1階が水没。マンボウやビーバーなど多くの生き物が津波や停電などの影響で死んだ。営業再開は大震災から1カ月以上たった11年4月23日。茨城県大洗町の水族館などから贈られたマンボウなどの生き物が展示された。

 松島水族館を運営する仙台急行の西條博也常務(36)は「観光地として一刻も早く再開したいという思いの一方で、この大変な時に再開していいのかという葛藤もあった」と当時を振り返る。

 しかし再開すると、入場者から「津波を思い出すので海のものは見たくなかったが、孫の喜ぶ顔を見て自分もうれしくなった」などという声があったといい、西條さんは「役に立てて良かった」と笑顔を見せる。

 ただ施設老朽化や財政上の問題があり、今回閉館が決定した。松島水族館の生き物は、仙台市に7月にオープンする「仙台うみの杜水族館」に引き継がれ、飼育される予定だ。西條常務は「(松島水族館の閉館は)正直悔しい。少しでもこの建物と生き物を記憶にとどめてほしい」と訴える。

 閉館を前に休日には約4000人が訪れる。宮城県石巻市に住む自営業山田英貴さん(39)は子供の頃に遠足などで訪れ、大人になっても幼い2人の娘を連れて何度も来た。「震災直後でも、近場で唯一子供を連れて遊べるいい場所だった」と話す。また、友人とともに訪れた県内在住の女性(18)は「施設がなくなると聞いて寂しくなって遊びに来た」と別れを惜しんだ。