女性科学者に贈られる「猿橋賞」の今年度…


 女性科学者に贈られる「猿橋賞」の今年度受賞者に、植物の気孔ができる仕組みを解明した鳥居啓子・米ワシントン大教授(49)が選ばれた。既に国際的に知られた学者だ。

 植物の表面にある気孔は、水を蒸発させたり、光合成で二酸化炭素を取り込み酸素を放出したりする。鳥居氏は気孔ができる際、複数の遺伝子が順に働くことを発見。気孔の数が少なく乾燥に強い農作物作りに応用できる可能性があるという。

 鳥居氏は東京都出身で、ドイツ人の理論物理学者の夫、娘2人と米国で暮らし、名古屋大客員教授も務めている。「頭で考えつくことには限界がある。何が面白いかは、植物が教えてくれる」とは傾聴すべき科学者の境地だ。

 粘り強く目標に向かって研究すべき最先端の遺伝子工学は、女性が得意とする分野の一つかもしれない。昨年、女性科学者の高橋政代氏が、世界で初めてiPS細胞から作った網膜細胞の患者への移植を実現させたのは記憶に新しい。

 猿橋賞の選考母体は「女性科学者に明るい未来をの会」(米沢富美子会長)で、米沢氏も1984年の受賞者。受賞時に慶応大学教授だった氏を研究室に訪ねたことがある。

 当時、3人の育児と研究で多忙を極めていたが、成果を出せたのは夫が支えてくれたおかげと話していた。今日も女性にとって科学者へのハードルは低くないが、こうした現役の女性科学者たちの歩みには励まされることが多いはず。