「雲雀巣に育つを見つゝ通学す」(小山白楢)…


 「雲雀巣に育つを見つゝ通学す」(小山白楢)。数年前に住んでいた場所は東京都下で、道路近くの切り通しに樹木が生え、小さな神社があった。そのせいか、春先になると、どこからかウグイスの鳴き声が聞こえてきた。

 自然の少ない都会の中でも、鳥たちの営みは行われている。ただ都会で目にする鳥はカラスやスズメ、ハトなどが多かったので、ウグイスの鳴き声には驚いた。

 しかし、故郷にいた時よく聞こえたヒバリの鳴き声は耳にしたことがない。日本野鳥の会のホームページには「見かけなくなった、春の風物詩」として、開発などで生息環境が失われ、ヒバリの減少していることが記されている。東京都版レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されているともある。

 幼い頃に住んでいた家が公営競馬場の塀に接していたので、競馬がない時にはよく芝生で遊んだものだった。芝生の上で寝転んでいると、春の空高くでさえずるヒバリの鳴き声が聞こえた。

 ある日、偶然にヒバリの巣を見つけた。巣には3~4個の卵が並んでいた。近くにいた親のヒバリが気流子を追い払おうと、ケガをしたふりをしてバタバタと地面を這い回った。こちらはそんな擬態を知っていたので、しばらく観察してから離れた。

 その後もヒナを見たりしたが、残念ながら巣立ちに付き合うまでには至らなかった。無事に育って巣立ちをしたのかどうか、今でも野鳥を見ると、ふと思い出すのである。