ムーミン機関車、さいたま市の鉄道博物館に


EF55形は1936年に製造、空襲で機銃掃射、天井に弾痕

ムーミン機関車、さいたま市の鉄道博物館に

一般公開されたEF55形電気機関車。「ムーミン」の愛称で知られている=12日午前、さいたま市大宮区の鉄道博物館

 ユーモラスな形から「ムーミン」の愛称で知られる電気機関車「EF55形」がさいたま市大宮区の鉄道博物館に移され、12日から展示が始まった。太平洋戦争中だった70年前には空襲も受けており、担当者は「戦後の移り変わりを表す代表的な機関車」と評している。

 午前11時のお披露目式で、EF55形は大きな汽笛を館内に響かせ、転車台で一回転した。記念撮影をしていた鉄道車両メーカーOBの加藤貴士さん(65)は「当時としてはかなり進んだデザインだ」と興味深げに話した。

 EF55形は1936年に製造された全長約19メートルの大型機関車。車両の前方が丸みを帯びた流線型の姿は、戦前はカバ、近年はフィンランドの童話に登場するムーミンに例えられた。

 当初は東海道線東京-沼津間で「富士」や「燕」といった特急列車をけん引。しかし終点で前後の向きを変えるため、転車台に乗せる手間がかかり、次第に普通列車を担当するようになった。

 45年8月3日には、静岡県沼津市の機関区で米軍機の機銃掃射に遭い16発被弾。外側は修復されたが、運転室内の天井には現在も弾痕が残っている。

 戦後は高崎線で普通列車をけん引し、58年ごろから国鉄の教育機関で実習用に使われ、64年に廃車扱いとなった。製造された3両のうち2両は解体。残る1両は保管され、86年に修復されて復帰した。イベント列車などに使われた後、2009年に再び引退した。