山脈が横断する四国はかつて、林業が盛ん…


 山脈が横断する四国はかつて、林業が盛んだったが、近年はこの産業の人気が低下し、山林の手入れさえ思うに任せない所が多くなっているという。先日、愛媛県に行って林業関係者から聞いた。

 木は放っておいても育つ、というのは素人の考えで、木材生産には森林の念入りな管理、即ち下刈り、間伐、枝打ちなどの手入れを定期的に行うことが必要だ。それを怠っては、林業は自ずと先細りになっていく。

 その上、間伐をしないと日光が枝に遮られ下草が繁茂せず、腐葉土の層が薄くなる。すると、雨水を貯めることができず、豪雨の折は思わぬ災害を呼び込んでしまう。数年前、四国を襲った土砂災害の原因もそこにあった。

 今回の総選挙で、自民党の公約に「強い農林水産業を」と「国土強靭(きょうじん)化の推進を」があった。この両者は決して無関係に実現できるものではない。林業が盛んになり、山林が整備されれば災害も防げるのだ。

 公約では前者に関連して、2020年東京五輪などに向けての「国産材の利用の拡大」を訴え、後者については「治水機能の強化」などがうたわれ評価できる。しかし、この両者を結び付け林業に若者を呼び込むための方策に乏しい。

 今日では、環境保護や自然災害防止など、森林の公益的側面を強調することで若者の林業に対する関心を高めることができるのではないか。林業が生き残る道もそこにあるように思われる。