ノーベル賞の天野さん、「恩返し」思い胸に
少年期に看病してくれた祖母の天野けんさん、感謝を胸に授賞式へ
青色発光ダイオード(LED)の開発でノーベル物理学賞を受賞する名古屋大の天野浩教授(54)には、恩返しをしたいと思う人がいる。病気がちだった少年時代に看病してくれた父方の祖母、天野けんさん(故人)。自分を支えてくれた大切な人への感謝を胸に、10日の授賞式に臨む。
天野さんは幼稚園から小学校低学年ごろまで、よく体調を崩した。母祥子さん(79)は「おなかを壊したり、風邪を引いたりということがけっこう多かった」と振り返る。
高熱を出して学校を休むこともあったが、両親は共働き。祥子さんは思うように休みが取れず、つらい思いをした。
そんな時、天野さんのそばで看病したり、病院に連れて行ったりしてくれたのが、浜松市の実家近くに住んでいた祖母けんさんだった。
教育やしつけも「どちらかというとおばあちゃん任せ。育てていただいた部分が多い」と祥子さんは話す。
天野さんは「一番世話になった。本当に助けてもらった」とけんさんへの思いを語る。「人の役に立つという気持ちが原動力」とよく口にする天野さんだが、「人」の中には祖母が含まれている。
けんさんは、天野さんが中学2年の時に他界した。「いつか(恩返しを)したいと思っていたが…」。遠くを見詰めながら、その後の言葉は続かなかった。(ストックホルム時事)