執念のタックル、渡利璃穏は諦めず金メダル
残り3秒で劇的な逆転、拳を突き上げ目にうれし涙
残り3秒、閃光(せんこう)のタックルが決まる。劇的な逆転で金メダル。拳を突き上げると同時に、渡利の目にうれし涙があふれた。「うれしい。やっと金メダルが取れた」
五輪3連覇を遂げた伊調馨の後継者として初めて挑んだ今月の世界選手権は、初戦でフォール負け。相手は昨年2位の強敵とはいえ、中途半端なタックルを返される不本意な敗戦だった。「気持ちをつくり直したい」。短い言葉に、アジア大会への決意を込めた。
その言葉通り、この日は攻撃に徹した。迷うことなく相手の足元へ何度も飛び込んだ。モンゴル選手との準決勝は点の取り合いになったが、常に先手で仕掛けて競り勝った。「最後まで諦めずに前に出るしかないと決めていた」。同じ過ちは繰り返さなかった。
決勝は2点を先取しながら、第2ピリオドで4点を奪われた。残り30秒を切ると、逃げ切りを図る相手に捕まえられて動けない時間が続いた。だが、焦りはなかった。「ラスト15秒の表示が見えて、今しかないと前に出た」。最後の瞬間まで自分を信じ続けた。
栄和人強化委員長は「世界選手権で負けてから、ものすごい練習をしていた。最後は執念を見せた」と成長を認める。63キロ級は、伊調が金メダルを守ってきた階級。「これから一歩一歩近づけるようにしたい」。2年後の五輪に展望がぐっと開ける勝利だった。(時事)