京大の研究グループがiPS肺細胞の作製率向上


分離に成功、再生医療の研究を促進

京大の研究グループがiPS肺細胞の作製率向上

ヒトiPS細胞を分化させ、蛍光で光るようにしたⅡ型肺胞上皮細胞(京都大提供)

 ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を肺の細胞に効率よく変え、目的の肺細胞だけを取り出す方法を開発したと、京都大大学院の三嶋理晃教授らの研究グループが発表した。肺の再生医療や治療薬の研究につながる成果という。論文は21日、米科学誌ステムセル・リポーツ(電子版)に掲載された。

 酸素を取り込み二酸化炭素を排出する「肺胞上皮細胞」は、肺の95%を占めるI型と、肺を膨らませる物質を分泌する2)型がある。2)型から1)型ができるため、世界中で2)型の研究が進められている。

 研究グループは、肺の細胞になる前段階の2)型細胞に着目。遺伝子解析の結果、CPMというたんぱく質が多く現れることを突き止めた。前段階の細胞にCPMを加え培養したところ、iPS細胞から2)型細胞に分化する効率が、従来の1%以下から3・8%に向上した。

 さらに、2)型細胞に分化すると光る蛍光たんぱく質を培養前に導入し、2)型細胞だけを取り出すことにも成功した。

 三嶋教授は「分化効率をさらに上げ、できた2)型細胞が機能するか確認する必要があるが、iPS細胞から肺胞上皮細胞を作ることで、さまざまな研究が容易になる」と話している。