日本の夏の風物詩と言えば、盆踊り、花火…
日本の夏の風物詩と言えば、盆踊り、花火大会などさまざまだが、書店の「夏の文庫フェア」もその一つだ。夏休みに入る中高生や大学生を対象に、基本的には出版社がこれはと思う文庫を選び、フェアの帯を付けて店頭に並べるだけである。それでも、若い人たちの読書意欲を刺激する効果は結構大きい。
英国では、クリスマスと夏のヴァカンスの頃が読書シーズンに当たる。今頃になるとタイムズなどの高級紙が読書特集を組み、推薦図書を紹介する。日本に比べ遙かに長い休暇を取り、海辺のリゾートで本を読んだりしながらゆったり過ごすのが、向こうのヴァカンスのスタイルである。
日本では「読書の秋」と言って、読書週間も秋にある。気候が涼しくなり、夜も長くなって「灯火親しむ秋」の言葉もあるが、実際に休暇が取れて読書する時間が増えるわけではない。
それを考えると、日本のサラリーマンにとっても、夏は読書の季節のはずなのだが……。高速道路の渋滞に巻き込まれ、やっと目的地に着いてやれやれというのでは、ゆっくり本も読んでいられない。
もっとも、休暇中はできるだけゆったり過ごそうという人は増えているようだ。ただ、こうした人たちが本を手に取るかどうかは、若い頃に読書の楽しみを知るか否かで決まる。
そういう意味でも、読書の習慣を身に付ける意義は大きい。若者よ、夏はまず書店の文庫フェアを覗(のぞ)こう。