東電の柏崎刈羽安全審査申請で安全協定の問題点指摘した読売、日経

◆自治体の介入に忠告

 東京電力が柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県柏崎市、刈羽村)について、先月27日、再稼働の前提となる安全審査を原子力規制委員会に申請した。

 東電は7月初めにも申請しようとしたが、地元・新潟県の泉田裕彦知事が、事前説明がなく申請を決定したことに強く反発し、叶わなかった。今回は同県の了解を得た上で申請する方針を表明したことを受け、泉田知事が前日(26日)の広瀬直己東電社長との会談後容認する姿勢に転換したためである。

 これで東電も、既に申請を済ませている北海道、関西、四国、九州の4電力(6原発12基)に続き、やっと再稼働に向けての一歩を踏み出したことになる。

 もっとも、新聞各紙の論調を見ると、再稼働を積極的に支持する新聞でも、前途が容易でないことを記している。

 その一紙、読売28日付社説の見出しは、そのものズバリ「再稼働への険しい道は続く」である。

 同紙は、泉田知事が今回「遅ればせながら」申請を承認したのは「当然の判断」と評価しながらも、「新潟県が一方的に承認を取り消せる点は問題だ」と強調する。

 事故時に原子炉の気体を外部に放出して破壊を防ぐ「フィルター付き排気設備」(ベント)の設置に関し、安全協定に基づく新潟県と東電の協議が不調だった場合、承認を無効とする条件も付けられた、として、同紙は「法的拘束力のない安全協定をタテに、規制委の審査に待ったをかけるのは行き過ぎだろう」と指摘。

 排気設備を含めて原発内の施設の安全性は、規制委が専門的に確認するルールになっている。同紙は「法的権限のない自治体が、審査へ過度に介入すれば、無用の混乱を招くばかりである」と懸念するが、同感である。

 産経30日付「主張」も、今回の申請を「一歩前進」と評価しつつも、ベント使用の際の事前の地元了解という申請容認の条件を問題視。「一刻を争う緊急時の安全対策で、運用に法的根拠のない地元独自の煩雑な手続きを課すことになる」として、同紙は早急な見直しを求めている。

 日経28日付社説は、産経と同様、申請の条件に県の事前了解の必要を求めたことに「疑問が残る」とした。そして、「電力会社と自治体が結ぶ安全協定には、何を対象とするかや法的な拘束力をめぐり議論がある。国も関与して安全協定のルールづくりが必要だ」と強調するが、貴重な建設的提言である。

◆朝、毎、東は反対論調

 これに対し、再稼働にもともと消極的な論調を展開している朝日、毎日、東京の3紙は「やるべきことが違う」(朝日28日付社説見出し)、「福島事故の収束が先だ」(毎日同)など申請はとんでもないとの論調である。

 朝日は「いまは福島にすべてを集中すべきときだ」と言い、毎日も「再稼働の前提として、汚染水処理など事故の収束に真摯に取り組み、企業としての信頼を取り戻す必要がある」などと強調する。

 さらに、この3紙には、綱渡りが続く東電の経営について、「安全性と経済性をはかりにかける事態は避けるべきだ」(毎日)との忠告はあっても、日本経済全体に対する懸念は見られない。

 原発再稼働の遅れから燃料費の高い火力発電への依存度が高まり、経営が悪化。「このままでは、福島第一原発の事故収束や電力安定供給にも支障が出かねない」(読売)ことや、必至とみられる電気料金の大幅な再値上げなどから管内の家庭や企業が大打撃を受け、「景気への影響も避けられまい」(産経)などと読売、産経、日経の3紙が懸念するのとは大違いである。

◆知事に疑問呈す読売

 今後、世界で最も厳しいとされる新規制基準で規制委の安全審査をパスしたとしても、次には新潟県、柏崎市、刈羽村の3立地自治体が再稼働を了承するかが焦点になる。

 読売は、政府や国会の事故調査委員会の行った福島第一原発事故の検証は不十分だとして、泉田知事が柏崎刈羽原発の再稼働前に徹底して検証・総括するよう求めていることに対し、事故の全容解明には相当の年数が見込まれる状況の中、「それまで再稼働を一切、認めないつもりなのか」と疑問を呈する。同紙が指摘するように、同知事は真意を分かりやすく説明する必要があるだろう。

(床井明男)