仲井真現知事と翁長那覇市長の対決か

県知事選の候補者選びが活発化

 今年11月に予定されている沖縄県知事選に向けて、与野党両陣営の候補者選びが活発化してきた。仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事は、米軍普天間飛行場を抱える宜野湾市や経済界から3選に向けた出馬要請を受けている。一方、革新陣営は普天間飛行場の名護市辺野古移設反対というシングルイシュー(単一争点)で翁長(おなが)雄志(たけし)那覇市長への出馬要請に動きだした。(那覇支局・竹林春夫、豊田 剛)

自公、仲井真氏3選を期待

革新系は翁長氏に出馬要請

仲井真現知事と翁長那覇市長の対決か

花束を手にする仲井真弘多知事=8日、宜野湾市民会館

 「仲井真弘多知事に感謝する大会」(主催・同実行委員会=平安座〈へんざ〉唯雄〈ただお〉実行委員長)が8日、宜野湾市民会館で開かれた。

 仲井真知事が昨年12月、普天間飛行場移設にかかわる辺野古沖の公有水面埋立を承認したことにより、移設に向けての環境が整ったことに対し、知事に感謝するもの。しかし、事実上、仲井真知事の3選に向けて激励するものだった。佐喜真(さきま)淳宜野湾市長、宮崎政久衆院議員(自民)、新垣(しんがき)哲司自民党県連副会長らが登壇、経済振興、失業率改善など2期7年半にわたる仲井真知事の実績を強調した。

 これに対し、仲井真知事は、「米軍基地の課題を少しでも前に進めることは大変な課題で、県民の生活と財産を守ることは当然のこと」と持論を展開、「第2次安倍政権が誕生して以来、ようやく(解決に向けての)光が見えた」と述べ、辺野古移設への理解を求めた。

 仲井真知事はこの日、進退については明言しなかったが、「いよいよ(基地問題を)解決する段階に来た。もう少し時間を下さい」と述べ、3選出馬の意欲に含みを持たせた。

 今回の大会には、那覇市と名護市以外の市町村首長が水面下で支持しており、経済界からは仲井真知事の3選を求める動きが表面化している。ただ、自民党県連は、仲井真知事が進退を表明しない限り、「仲井真知事3選でいく」方針だが、辞退した場合に備え、「党本部と調整しながら万全を尽くしている。絶対に負けられない選挙だからだ」(県連幹部)。

 公明県本部も今のところ「仲井真知事3選」。「自公一体路線に変更はない。知事選は、市長選と違って、党本部の方針に従うことになろう」(県本部幹部)と、次の知事選では、誰が候補者になっても自公路線で選挙戦を戦う予定だ。

仲井真現知事と翁長那覇市長の対決か

金城徹市議(手前)の質問に答える翁長雄志市長=6日、那覇市議会

 一方、革新陣営は、社民、共産、中道左派の県民ネットなど5団体が統一候補の人選を進めており、これまでに翁長雄志那覇市長と琉球大学大学院教授の高良鉄美氏の名前が浮上している。

 こうした中、那覇市議会の最大会派である自民党系の自由民主党新風会が5日、辺野古移設反対の姿勢を鮮明にしている翁長雄志市長に、「政治姿勢は県民から高い評価を受けている」との理由で立候補要請した。6日の市議会6月定例会の代表質問で新風会代表の金城徹市議が翁長市長に改めて出馬を要請した。

 翁長氏は「オールジャパンで沖縄に米軍基地を置いておけという中で、私たちは(保革を超えた)オール沖縄で立ち向かわないといけない」と述べ、「オール日本対オール沖縄」という対立構造を明確に表明した。

 また、保守派から「翁長市長は『革新にシフトしたのか』と言われるが」と政治スタンスを問われると、翁長市長は「私は父親の代から根っからの保守と自負している」と、革新色の払拭(ふっしょく)に努める姿勢を示した。自民党県連は翁長市長に対し、公明党と緊密な関係にあることから、自公体制への協力を求めたが、話し合いは決裂、自民党県連と翁長市長との対決姿勢が明確になった。

 しかし、革新系が翁長市長一本でまとまっているわけではない。「保革を超えた選挙戦」を標榜(ひょうぼう)しているが、「辺野古移設反対」「知事承認撤回」という争点だけでまとまるかどうかは不透明だ。自衛隊および日米安保を容認する翁長市長の政治姿勢に対して革新政党は相いれない。共産党や社民党が元自民党県連幹事長だった翁長氏を信念を曲げてまでも推すかどうか。社民党の中には、「連合」を割って候補者選びを探っている動きもある。

 市長に近い市議会新風会も決して一枚岩ではない。新風会は今年1月、安倍首相に辺野古移設断念を求める意見書に賛成したことを理由に、3月に県連から役職停止処分を受けたばかりで、処分後、1人は会派離脱。さらに現在いる11人のうち、1人は要請を欠席。もう1人も翁長市長への出馬要請に難色を示している。市長と距離を置くある市議は「新風会は分裂を免れない。党本部からの圧力に耐えられる人が何人いるだろうか」と冷静に見ている。

 自民党県連のある幹部は、「市議会の県連造反議員は、今回は除名処分だ」と強気だ。

 翁長氏はこれまで「まず話を聞いてみたい」と述べ、出馬について肯定も否定もしていない。しかし、「市議会の動きや候補者選びのシナリオを描いているのは、翁長市長」(自民党県連幹部)という。市長を辞職すれば50日以内に市長選が行われる必要がある。このため、知事選と那覇市長選のダブル選挙を視野に9月以降に翁長氏は出馬を表明するとの見方が広がっている。