米空軍嘉手納基地が養護施設の児童104人を招待

日米友好の礎「サクラ作戦」

米国人ボランティアが相手

 米空軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町)は3月28日、沖縄県内の児童養護施設の子供たち100人以上を招待し、基地見学や工作活動などを通じて米国人ボランティアと交流した。嘉手納基地は地域コミュニティーとの交流を重視しており、今回もその一環だ。こうした草の根運動の積み重ねが日米同盟の強化につながるものとして高く評価されている。(那覇支局・豊田 剛)

ヘッカー司令官、地域社会との交流を最重視

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爆発物処理班のデモンストレーションを見学する子供たち=3月28日、嘉手納基地(嘉手納町)

 嘉手納基地が、保護者がいない、または虐待されているなどの事情で養護施設に入所している児童を招待するのは昨年に続いて2回目。桜が咲く春に実施していることと、東日本大震災でのトモダチ作戦にちなんで、「サクラ作戦」と呼ばれている 。

 イベントに参加したのは県内の児童養護施設に通う児童ら104人で、昨年の倍の人数を記録した。6歳から17歳まで幅広い参加があった。基地内の高校生や軍人軍属ら100人以上がボランティアとして引率や通訳を手伝った 。

 バスで嘉手納基地に到着した子供たちは、消防車による放水アーチで出迎えられると、トモダチ作戦で出動した空中給油機KC135を見学した 。

 昼食後、子供たちは高校生らに手伝いをしてもらいながらペーパークラフトに挑戦。日本語ができるボランティアを通じて会話を楽しんだり、身ぶり手ぶりでコミュニケーションする光景はほほ笑ましいものだった 。

 引き続き、爆発物探知機の実演を見学。希望者は探知機をリモコン操作したり、爆発物処理班の防護服を着用して爆発処理の大切さを学習した。最後は屋外の遊具で体を動かしながら遊んだ 。

 参加した子供たちは、衣服や文房具などが詰まったリュックサックをプレゼントされた。最後は、養護施設の子供たちとボランティアの中高生らは涙を流しながら抱き合い、再会を誓った 。

 養護施設と嘉手納基地の仲介役となった非営利ボランティア団体「琉球之風」の天久龍男理事は、「子供たちがアメリカの子供たちと仲良く遊んでいる姿を見るのがうれしい。普段、異文化と接する機会が少ない子供たちにとって視野が広がる良い機会になった」と「サクラ作戦」に感謝した 。

 沖縄本島南部の養護施設の引率者は、「児童を基地内に立ち入らせること自体を警戒する施設の関係者から心配する意見があったが、子供たちの楽しそうで生き生きした姿を見ると連れて来て良かった」と不安が吹っ切れた様子だった 。

米空軍嘉手納基地が養護施設の児童104人を招待

ジェイムズ・ヘッカー准将

 嘉手納基地司令官のジェイムズ・ヘッカー准将は「サクラ作戦」の最高責任者として最初から最後まで同行した。ヘッカー准将は「嘉手納基地にとって地域コミュニティーとの交流は最も大切な活動の一つで、サクラ作戦は今後も続けていきたい。交流を通じてお互いについて理解し合うことができた。子供たちのきょうの経験は、将来の日米関係にとっても有益になる」と「サクラ作戦」実施の感想を語った。また、「秋に行われるスペシャルオリンピックスのように春の恒例の行事にしたい」と意気込んだ 。

 嘉手納基地は2000年以来、毎年11月にスペシャルオリンピックスを開催している。地元の身体および知的発達障がいを持つ子供たち千人以上が参加しているビッグイベントだ 。

 スペシャルオリンピックスは1962年、ジョン・F・ケネディ大統領の妹ユニス・ケネディ・シュライバー氏が提唱して始まったもの。今年はキャロライン・ケネディ駐日米国大使の参加が予定されているという。ヘッカー准将は「スペシャルオリンピックスを通じて沖縄とアメリカのコミュニティーの間に築かれた関係はかつてないほど良くなった」と誇る 。

 嘉手納スペシャルオリンピックスおよびサクラ作戦の発案者の一人で、嘉手納基地ゴルフ場顧問を務める主和津ジミーさん(73)は、第2次世界大戦で両親を失った後、沖縄に渡り米軍基地にお世話になったという。「基地内でのボランティア活動を通じて日米友好のために恩返しをしたい」と目を輝かせた。