鈴木猛史選手、つらい記憶を歓喜の記念日に
積極姿勢が結実、男子回転座位で金メダル
つらい記憶の刻まれた日が、歓喜の記念日になった。男子回転座位で鈴木が優勝。追い続けた金メダルを手に入れたのは、チェアスキーを始めるきっかけになった事故と同じ日だった。
暖かい昼の間に緩んだ雪面に、夜になると雨交じりの雪が降り、2回目はコースが荒れた。多くの選手が鋭いターンを避けて慎重に大きく回る中、1回目2位の鈴木は思い切ってポール近くに切り込んだ。「びっくりするくらい落ち着いて滑れた」。跳ねるチェアスキーを持ち前の安定した上体で支え、好タイムでゴール。直後に1回目1位のソコロビッチ(クロアチア)が転倒し、勝利を確信した。
交通事故で両足の太ももから下を失ったのが小学2年生の3月13日だった。「やはり忘れられない日」。1年後にはチェアスキーを始め、ぐんぐん力をつけた。
初出場の2006年トリノ大会、10年バンクーバー大会とも緊張で力を出し切れなかったという反省があった。だが、ワールドカップなどで結果を残し、自信をつけた今回は、最後まで平常心を失わなかった。
チームメートに祝福された後、観客席を見つめ、「両親にメダルを掛けてあげたい」。ずっと声援を送り続けてくれた両親への思いがあふれた。(ソチ時事)