アルツハイマー病治療薬が米国で承認された…


 アルツハイマー病治療薬が米国で承認されたが、島津製作所は同病を判定するため、脳内のたんぱく質の蓄積状況を血液検査で推定できる装置を発売した。

 少量の血液で済み、従来より患者の負担も小さい。開発したのは2002年のノーベル化学賞受賞者である同社の田中耕一エグゼクティブ・リサーチフェロー。受賞対象の質量分析技術を用いた。

 当時、田中氏は今後の目標に「血液1滴でさまざまな病気をすぐに分析できる装置の開発」と。気流子は夢物語かと思ったが、今回その一里塚としてだが約束は守られた。うれしいニュースだ。

 現在、わが国経済を戦後世界のトップグループに引き上げた半導体や原子力産業などに元気がない。停滞と言っていい。半導体戦略で台湾大手企業の誘致が必至だとする声が盛んだ。原子力産業の中心である原発事業に至っては、世界の先頭を走っていた核融合技術開発が事実上頓挫し、フランスなどに教えを乞おうとするありさまだ。

 理工系を目指す学生さらに理工学博士が減少しているが、いずれ企業の技術者不足が目に付いてこよう。そうなっては何とも情けない。当時、技術者を開発に駆り立てたのは「技術立国」に日本を押し上げようとする熱意だった。

 過去に蓄積してきたものづくりの強さを最大限に生かせる形で開発を展開すべきだ。田中氏は「日本(の技術者ら)に欠けているのは、賞や受賞者の数よりも自信」と話している。その通りだ。