豊かな漁場に恵まれる日本だが、近年水産資源…


 豊かな漁場に恵まれる日本だが、近年水産資源が減少し、特にサンマとスルメイカの不漁が続いている。一方、一時は「幻の魚」とまで言われたマイワシが豊漁で、水産関係者は「おいしいイワシをもっと食べて」とPRしている。

 関係者の間では「魚種交代説」が浮上しているという。地球規模の気候変動が、海水温の変化、海水の攪乱(かくらん)によるプランクトンの発生などの海洋環境の変化をもたらし、数十年のスケールで、ある魚種が豊漁になったり不漁になったりするというものだ。

 水産学者の故川崎健氏が1983年に国連食糧農業機関(FAO)の専門家会議で「レジームシフト」理論として初めて発表した。川崎氏は80年代に起きたマイワシの漁獲量の激減は日本だけでなく、米カリフォルニア沖やチリ沖でも起きていることなどを根拠に、乱獲が原因とされていた漁獲量の減少を地球規模の気候変動にあるとしたのである。

 当時は冷ややかな反応だったが、この理論は徐々に受け入れられるようになった。ただあくまで仮説であり、乱獲が水産資源激減の大きな原因の一つであるとの認識は定着している。

 それでも魚種交代に対する認識は、水産関係者だけでなく消費者にとっても有益だ。サンマが不漁であればサバやイワシを食べればいい。

 当然、人によって好き嫌いはあるが、サンマ以外の魚の良さを発見する努力も必要だ。イワシに「鰯」の字を当てるのは気の毒な気がする。