日韓関係悪化が経済に悪影響

通用しなかった「2トラック」

 日韓間の懸案である「慰安婦合意」の実質的破棄、「徴用工判決」によって両国関係は最悪の状況に陥っている。韓国政府は政治と経済を分けて進める「2トラック」という都合のいい理屈を並べていたが、「コロナ事態」があったとはいえ、それがまったく通用しないことが明らかになった。

 月刊朝鮮(6月号)が韓国経済研究院の調査を引用して報じた。韓経研は徴用工判決が出た2019年を基準として前後2年の貿易データを分析した結果、「両国間の貿易規模は明確に萎縮していた」と発表した。

 この間、対日貿易は11・9%減った。韓国の対外貿易全体では7・6%減だから、その減り幅の大きさが分かる。

 直接投資も減少した。製造部門の海外直接投資は28・6%増えているのに、対日投資は増加分に匹敵する25・6%も減っている。

 日本の対韓投資はさらに冷え込んでいる。製造部門の対外投資は47・8%増加しているのに対して、対韓投資は38%も減った。

 その結果、貿易萎縮に伴う経済的影響は「生産誘発額が1兆2000億ウォン、付加価値誘発額5900億ウォン、就職誘発人員1万3300人」が減ってしまったという。

 文在寅政権がいくら「2トラック」を唱えても、政治・外交対立の影響は経済活動に及ぶ。一方で胸ぐらを掴(つか)み、口角泡を飛ばして罵(ののし)っておきながら、他方で都合よくモノを売ってくれという神経は、日本だけでなく、世界のどこも持ち合わせていない。いったい文政権のこの楽観がどこから出てくるのか。

 韓国経済界は悲鳴を上げている。「韓日政府は早急な関係正常化努力で、経済的悪影響を遮断しなければならない」と秋光鎬(チュグァンホ)韓経研政策室長は同誌に語る。しかし、こうした経済界の声は青瓦台(大統領府)に届くのか。

 痛みを感じているのは韓国だけではない。当然日本も影響を受けている。しかし、輸出の縮小は韓国経済悪化による影響が強いし、インバウンド減少は「コロナ禍」のせいであって、まして韓国人観光客だけで支えられていたものではない。圧倒的に痛みが大きいのは韓国なのだ。

 文政権はここにきて、対日関係改善のサインを出してきているが、日本が簡単に応じる可能性は小さいと韓国側はみている。ワクチンの普及で経済も動き出す中で、日韓関係改善の動向が注目される。

 編集委員 岩崎 哲