中途半端な朝日「家じまい」特集、重みあるNW日本版の特別リポート

◆庶民が参考にできず

 週刊朝日(4月9日号)が「『家じまい』で楽になろう」という特集を載せている。他誌の高齢者を対象とした「人生の片づけ」関連の類を同誌もやり出したのだ。だが、そこは二番煎じになることは避けたいから、「家」のしまい方に焦点を当て、こうした企画のいわば“探り”のような記事となっている。

 登場するのは中尾彬、池波志乃の俳優夫婦。アトリエ、別荘、一軒家を整理して、タワーマンションに引っ越した、という話のどこが参考になるのか、ちょっと分からない。女優の高橋惠子も「郊外にある100坪もある豪邸を『家じまい』」しようとしたが、「売れなかったので」途中マンション暮らしを経て、戻って来て暮らしているという話。これも庶民が参考にできるものではない。

 他は仮名で登場する「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」に移った人々の体験談。これを載せるのであれば、前振りなど置かずに、すぐに「サ高住の選び方、暮らし方」だけを扱った方がよほどスッキリした特集になると思うがどうか。

 とはいえ「家じまい」そのものは今後も大きな問題となってくる。地方では子が都会に出て行って、親だけが残され、高齢化して、独居状態となる。それだけでも行政・福祉の問題なのだが、亡くなった後には「空き家」となって、街の寂びれ、景観の棄損、治安の悪化などを招く。「家じまい」そのものでも十分に特集が組めたはずで、中途半端の感は免れない。

 次の記事「孤独の処方箋」はコロナなどで「生活環境は一変し、人生設計に狂いが生じた」中で、「若者から高齢者まで、孤独対策はすでに待ったなしの状態」になっているという指摘だ。孤独を避けるためにもコミュニティーづくりがしきりに言われているが、人と会うな、会っても話し込むな、距離を置け、というコロナ対策は、地域社会づくりの反対を行っているのが現状である。

 秋田音頭ではないが、「何につけても、一杯飲まねば、物事はかどらねぇ」ものだ。マスクをして、会話はなしで、早く帰れでは、はかどりようがない。「孤独対策は始まったばかりで、課題も山積している」「人と人がつながる仕組みをどう作るか。それが問われている」の〆文句は、結局何も示していない。

◆ワクチン敗戦の日本

 週刊文春(4月8日号)が「日本はなぜ先進国最下位になったのか、菅『ワクチン敗戦』」を載せた。ワクチン接種は英国が44%に対して、わが国は0・65%だ。イスラエルに至っては60%を超えている。

 遅れている理由はワクチンの「安全性確認」。さらには権限が係長クラスだという「ファイザー日本法人」と交渉したこと。そして、ワクチン接種体制に厚生労働省、国土交通省、経済産業省、総務省が絡み、縦割り行政で「物事はかどらねぇ」のに加えて、扇の要である官房長官が問題だと同誌は指摘する。

◆中国の民族浄化告発

 日本が老後の話やワクチン接種が遅いと言っている間に、世界では次々に事件が起こっている。ニューズウィーク日本版(4月6日号)がスペシャルリポートとして中国新疆ウイグル自治区で起こっている「ジェノサイド(集団虐殺)」を特集しており、読ませる。

 ここではウイグル人への虐待、さらに許し難い女性への暴力が行われており、ウイグルの女性たちが勇気を出して告発している。拷問、性的暴行、監禁、強制避妊手術、そして、漢族化のための強制結婚などだ。これらの具体例を体験者が語っている。

 人口の自然減少でさえ、国際社会は保護に動き出すのに、こっちは一国の政府による「民族浄化」という名の抹殺政策が衆人環視の中で行われているのだ。国連はじめ世界は行動しなければならない。それを促す重みのあるリポートだ。

 ミャンマーでデモ取り締まりの警察に拘束された日本人ジャーナリストの記事も目を引く。国軍による国民の殺戮(さつりく)が行われているのだ。ワクチンが速い遅いの次元ではない。

(岩崎 哲)