ビットコイン決済のコロナワクチン詐欺等に警鐘鳴らす「日曜報道」
◆中国製の闇ワクチン
医療関係者を優先して新型コロナウイルスのワクチン接種が始まった。今後の普及に関心が集まるところ、2月28日放送のフジテレビ「日曜報道ザプライム」は、ワクチン不足で接種が進まない欧州連合(EU)を例にワクチン争奪戦が起きている問題を指摘する一方、国内で闇のワクチン接種や偽ワクチンが出回っていることを取り上げた。
「知人の闇ワクチン接種に立ち会った」というジャーナリスト今西憲之氏の取材を基にした再現映像では、大阪市内のクリニックで1回3万円の中国製ワクチン接種を中国人企業家が「自己責任で接種する」との同意書を書くのを条件に行っていたという。
その際、本物のワクチンだと中国人企業家は説明したというが、確認はできないはず。このような誘いに乗る人がいるのは、パンデミックとなっているコロナ禍の不安からに違いない。
むしろ本物なら中国の関与さえ疑われる。闇行為の上、同意書まで書けば“弱み”を握られたも同然だ。海外では、南米ペルーのように政府高官がごっそり中国製ワクチン“特権接種”のスキャンダルに巻き込まれた例もある。
番組では、「厚労省は未承認ワクチンの販売、接種は医薬品医療機器等法違反になると注意を呼び掛けている」と訴え、ゲスト出演したワクチン担当閣僚の河野太郎規制改革担当相は、わが国で進めるワクチン接種について「今度のワクチンは無料です。お金を払う必要もないし、お金を払ったから優先順位が上がることもない」と強調した。
◆偽物届く違法サイト
さらに番組は、ワクチン詐欺についても扱った。「10万円払うと優先的に受けられる」「海外から入手できる」などの相談が東京都港区の国民生活センターに寄せられており、ワクチンがネット上で売買されているという。
そのカラクリについて説明した情報セキュリティー専門家の三輪信雄氏によれば、特殊なアプリを使わないと辿(たど)り着かない“ダークサイト”に違法薬物や拳銃などと一緒にモデルナ製、ファイザー製などの「ワクチン」が陳列されている。が、購入してもほぼ偽物であるといい、「届いたものを打ってしまうのが一番恐ろしい」と三輪氏はコメントした。このダークサイトの決済は仮想通貨ビットコイン(BTC)だ。ニッチな仮想通貨がネットの裏に表に普及している。
が、パンデミックの1年間でビットコインは10倍以上も値上がりした。都市封鎖などで人々のネット利用が増えるに従い、昨年3月8日に1BTCは5200㌦だったが、年末に3万㌦を超え、特に先月は米電気自動車(EV)メーカーのテスラが15億㌦分を購入したのを弾みに暴騰、一時5万8000㌦を超えた。今やビットコイン総額は100兆円を超え、ネット上の暗号資産として企業や金融機関の投資の動きは増えている。
◆“ヤバい偉人”の正体
これも新型コロナがネット時代を加速させた社会変容だろう。そのビットコインを開発したネット上の謎の人物「サトシ・ナカモト」を1日放送の日本テレビ「近未来創世記 日本を救うヤバい偉人」が、“ヤバい偉人”の一人として取り上げたのが面白い。
その前置きに番組は、共有ファイルソフト「ウィニー」(winny)を開発し、著作権侵害などウィニー事件の渦中のプログラマー金子勇氏(最高裁判決で無罪、2013年死亡)を取り上げ、サトシ・ナカモトの正体は金子氏との説に踏み込んだ。
サトシ・ナカモトはビットコインを開発すると10年12月にネット上から消息を絶ち、100万BTC(当時の推定価格で20万円)を所持しながら、今日では1兆円以上の空前の暴騰をしても何も手を付けていないことなど、故金子氏がサトシ・ナカモトであるなら、さまざまな面で辻褄(つじつま)が合うという。仮想通貨の世界的影響を思うと、ミステリアスな謎解きである。本当なら日本が生んだ空恐ろしい天才だ。
(窪田伸雄)